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有元隆志

【第741回】「尖閣」で中国外相の暴言になぜ反論しない

有元隆志 / 2020.11.30 (月)


産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志

 

 中国の王毅外相訪日で鮮明になったことがある。一つ目は習近平国家主席を国賓として招くべきではないということ。二つ目は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛にかける政府・自民党の気迫の欠如だ。

 ●習主席国賓来日は中止に
 王外相の訪日は、延期となった習主席の国賓来日の環境整備が本来の目的だった。ところが、一連の発言によって真逆の効果をもたらした。中国大使館の発表によると、王氏は11月24日夜の茂木敏充外相との会談で、「新型コロナウイルス肺炎の感染が世界的にまん延し、国際的枠組みが急速に変化し、世界は動揺・変革期に入った」と述べた。まるで人ごとである。新型コロナウイルスは中国・武漢発であり、中国にはウイルスを世界にばらまいた責任がある。武漢で何か起きたかの情報を国際社会に開示し、謝罪すべきだ。
 日本固有の領土である尖閣諸島についても、王氏は会談後の共同記者発表で「一部の正体不明の日本漁船」「偽装漁船」が尖閣周辺水域に入るため、中国海警局が「やむを得ず必要な反応をしなければならない」と、領海侵入を正当化した。菅義偉首相らは判を押したように尖閣問題で「前向きな対応」を求めるというあいまいな表現をするのではなく、はっきりと「尖閣は日本の領土であり、どんなことがあっても守り抜く」と通告すべきだった。
 王氏は香港や新疆ウイグル、内モンゴル、チベットでの人権弾圧に関して何の改善策も説明せず、習主席を国賓として招待する状況ではないことが浮き彫りとなった。「戦狼外交」の先兵である王氏は日本国民の反中感情をかえって高めただけだった。

 ●尖閣防衛に必要な法改正を
 茂木氏は国内世論の厳しさを意識し、会談で尖閣問題や日本海の大和堆での中国漁船の操業のほか、香港、新疆ウイグルなどの人権問題を提起した。そこまではよかったが、会談後の記者発表で尖閣問題について一方的な主張を展開する王氏に反論せず、「謝謝」と言って記者発表を終わってしまった。自民党外交部会で茂木氏に批判が相次いだのも当然である。主張すべき時に主張しないと相手に侮られるだけだ。
 ただ、問われているのは自民党自身の姿勢でもある。二階俊博幹事長は25日に王氏と昼食を共にした。中国側の発表資料には二階氏がにこやかに王氏とあいさつを交わす写真が掲載されていた。二階氏が会談で尖閣問題を取り上げた形跡はない。
 政府・与党に求められているのは王外相との談笑ではなく、尖閣防衛に必要な法改正などを早急に行うことだ。中国の全国人民代表大会(全人代)が11月4日に公表した海警法案は、国家の主権や管轄権が外国の組織、個人に侵害されたときに「武器の使用を含めたあらゆる必要な措置」を取れると明記した。対抗して、日本も海上保安庁法25条の改正に踏み切るべきだ。海上保安庁を軍隊として組織・訓練することを禁ずる条文は海上保安庁と自衛隊の連携を妨げている。備えを怠れば尖閣を失う。菅首相らの気概が試されている。(了)
 

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