国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一
今年は、朝鮮戦争の開始から60年に当たり、マッカーシー米上院議員による「赤狩り」旋風の開始60周年でもある。35年間の日韓併合より、北朝鮮およびそれを支える中国共産党との対峙期間の方が長く、しかも現在進行形だ。この基本認識を欠いた菅直人氏の首相談話のようなものが出てくる限り、マッカーシーの今日的意義は消えない。
菅首相が直視すべき自身の過去
「モンゴルの人々はソ連に魅力を感じ、進んで衛星国となった。朝鮮もソ連に魅せられていくのではないか」―。ルーズベルト、トルーマン両政権の外交ブレーンだったオーウェン・ラティモアの言葉である。
アメリカの東アジア政策が、こうした露骨なスターリン礼賛者に左右されてきた実態を暴いたのがマッカーシーだった。行き過ぎはあったものの、その視野は、終戦50周年に悪名高い謝罪談話を出した村山富市元首相や、菅首相より遙かに広かった。そして日本の民主党内には、今なおラティモアの亡霊が数多く徘徊している。
菅首相もその一人である日本の左翼リベラル勢力は、金日成・金正日独裁体制の出先機関である朝鮮総連を陰に陽に支援してきた。そのことにより、日本は、北にとって最大の資金調達源および対韓工作基地と化し、韓国民に「多大の損害と苦痛」を与えた。対韓工作の一環として日本人拉致も行われた。北に渡った資金は、秘密警察網や強制収容所の充実にも役立ったはずだ。
次の試金石は朝鮮高校無償化
菅首相が韓国民、北の民衆そしてわれわれ日本人に「痛切な反省と心からのお詫び」をすべきはその点である。韓国で捕まっていた拉致実行犯・辛光洙の釈放嘆願書に署名した愚行は、反省すべき象徴的な例に過ぎない。反省は一方的であってはならず、韓国にも10年間に及んだ金大中、盧武鉉両政権の対北宥和政策の清算を求める必要があるが、菅談話には以上のような認識が完全に欠けている。「自らの過ちを省みることに率直でありたい」とはよく言ったものだ。
談話問題で落第した菅政権にとって、次の試金石は朝鮮高校の無償化問題である。日本の高校に入れば授業料を納めずに済むが、朝鮮高校に入れば納めねばならないとなれば、在日子弟の朝鮮高校離れが一層加速するかもしれない。朝鮮総連や金正日政権は、組織防衛上、必死にならざるを得ないわけだ。
だが、異様な個人崇拝を強要される若者が減るのは望ましい。朝鮮高校は廃れるにまかせ、在校生を日本の高校に温かく迎え入れればよい。朝鮮学校無償化のため日本人の血税を投入するなど、とんでもない話である。朝鮮高校の「相対的不利化」は自由主義国として正しい政策だ。(了)
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第51回:日韓併合より総連支援を反省せよ(島田洋一)