岸田文雄首相(自民党総裁)が自ら率いてきた「宏池会」(岸田派)を解散すると表明した。呼応するかのように、最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)と「志帥会」(二階派)も解散を決めた。いずれの派閥も会計責任者が政治資金収支報告書への虚偽記載の罪に問われ、批判を浴びていた。解散は当然と言えよう。
これを機に、政治家個々の能力よりも当選回数を優先する人事を主導し、同時に政治資金パーティーを通じて行き過ぎた資金集めを行ってきた「派閥政治」の弊害を打破してほしい。
●党のガバナンス強化を
自民党の歴史を振り返ると、たびたび派閥解消が唱えられてきた。昭和63(1988)年には政界の実力者らがリクルート社から子会社の未公開株を受け取っていた「リクルート事件」が起き、派閥解消を最終目標とする「政治改革大綱」がまとめられた。それでも派閥はなくなることはなく、惰性として続いてきた。
もちろん派閥を解散したからといって、「政治とカネ」の問題をうやむやにしていいという話ではない。政治資金の移動は銀行振り込みとするなどして透明化を図るべきだろう。政治資金規正法では外国人献金を禁じているが、外国人による政治資金パーティー券購入には国籍制限がなかった。こうした抜け穴を塞ぐことも必要だ。
何よりも政治家が政治資金規正法を守るという当たり前のことができていないことが今回の事件で露呈した。自民党の政党としてのガバナンスを強化することが求められる。
●自民しか選択肢はない
今日の日本は中国による軍事的威圧、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアによるウクライナ侵略など、「リクルート事件」当時よりもはるかに厳しい国際情勢に直面している。デフレからの完全脱却、少子化問題に向けた取り組みも喫緊の課題だ。そうした中で、野党第1党の立憲民主党をはじめ野党各党には政権担当能力がない。自民党が変わることしか選択肢はないのである。
派閥には所属する国会議員が政策を勉強する役割があると強調してきた岸田首相が自民党最古の名門派閥である「宏池会」の解散に踏み切ったことは、それなりの意味があろう。岸田首相は求心力を回復し、自らが掲げる自民党総裁任期(今年9月)中の憲法改正に邁進すべきだ。(了)