6月1日、木原稔防衛相は韓国の申源湜国防相とシンガポールで会談し、韓国軍駆逐艦による自衛隊機へのレーダー照射問題を事実上棚上げし、日韓防衛交流・協力を活発化することで合意した。
2018年に起きた火器管制レーダーの照射は、一歩間違えれば自衛隊機が攻撃されかねない重大な敵対行為だ。韓国がそれを認めないままで日韓が防衛協力をすることは危険であり、木原防衛相はそのことを十分承知しているはずだ。
それでも合意に踏み切ったのは、尹錫悦政権がレーダー照射の背後にある文在寅前政権と北朝鮮の危険な癒着を暴けないことを見切った上で、尹政権の任期はあと3年残っているから、その間だけでも台湾有事や北朝鮮の核の脅威に備えるためには韓国軍との協力が助けになると判断したのだろう。私もその判断を支持する。
●事件の背後に北と文前政権の癒着
尹大統領と申国防相はレーダー照射があったことを知っているはずだ。なぜ、木造船に乗って日本海の大和堆近くを漂流していた4人の北朝鮮人の「救出」に韓国海軍の駆逐艦が出動したのかについて、当然、韓国海軍には関係書類があり、大統領や国防相はそれを見ているはずだからだ。
私はこれまで繰り返し、①漂流していた4人は漁民でなく、粛清を恐れて逃亡した護衛司令部(最高指導者・金正恩氏の警護担当部署)の関係者である②北朝鮮は文政権中枢に4人の拘束と北朝鮮への送還を依頼し、韓国海軍が出動した③そこへ自衛隊機が近づくとその秘密が暴露されるので、レーダー照射をした―という情報を紹介してきた。
●きっかけは米主導の金正恩暗殺計画
最近、私が北朝鮮内部につながる筋から聞いた詳しい内容は以下の通りだ。
▽2017年、米朝が核ミサイル問題を巡り軍事的緊張を高めていた時、護衛司令部幹部が米国に買収され、衛星通信で位置情報を知らせる装置を内蔵したスマートフォンを金正恩氏の別荘に持ち込んだ。金氏暗殺作戦の一環だった。東南アジアで護衛司令部傘下の東洋貿易総会社幹部が米国に買収され、スマホ200台が持ち込まれた。
▽翌年、それが発覚して大々的に捜査が行われ、護衛司令部の司令官や政治委員、東洋貿易総会社幹部らが銃殺される大粛清があった。その過程で逮捕されそうになった護衛司令部幹部の将軍とその部下、護衛司令部から人民軍総政治局に移っていた幹部の3人が、咸鏡南道北青の護衛司令部の水産基地から漁船を盗み、機関長1人に船の操縦をさせて日本への亡命を図った。
▽当時、秘密に開設されていた北朝鮮の労働党書記室と韓国の大統領府間のホットラインで、北朝鮮が文政権に対し、木造船を追跡して逃亡者の亡命を阻止し、送還するよう依頼し、それを受けて文政権が海軍を動かした。その動きを自衛隊に見せたくなかったのでレーダー照射をした。
日本は韓国との防衛協力を進めつつ、レーダー照射の事実を認めない尹政権への警戒心を解いてはならない。(了)