自民党総裁選(27日投開票)に出馬した9人の候補者の口からしばしば出てくるのが「覚悟」という言葉である。例えば、小泉進次郎元環境相は「覚悟を持って、やるべきことを断行し、未来に明るい展望の持てる国に」と決意を語っている。日本を取り巻く安全保障環境がかつてないほど厳しい中にあって、新しい首相となる次期総裁には、文字面だけでなく真の意味での「覚悟」を持って日本を守り抜くことが求められている。
●中国の政治工作の標的?
総裁選の公開討論会、テレビ番組出演において、9人の候補の中で「最も安定している」(政府高官の一人)との印象を与えたのが林芳正氏だった。それもそのはずであろう。官房長官として毎日記者会見をこなしており、受け答えには慣れている。外相、防衛相、農水相、文科相も歴任し、経験も豊富だ。
だが、14日の日本記者クラブでの会見で「岸田文雄内閣の大番頭(官房長官)として、岸田内閣が低支持率にあえぐような状況になった責任は林さんにもある」と指摘されたように、政治には「説明責任」も重要だが「結果責任」がある。それは党ナンバー2でもある茂木敏充幹事長にもあてはまる。
林氏の場合、「親中派」と言われる。外相就任前まで、在日中国大使館が「友好7団体」の一つとして位置づけていた日中友好議員連盟の会長を務めていたからだ。本人は「媚中ではなく知中派」と反論するが、中国の対日政治工作に利用されてきたという自覚がどこまであるのだろうか。
●高市氏に対中反論の実績
日本政府関係者によると、9人の中で中国にまともに反論したことがあるのは、高市早苗経済安全保障担当相ぐらいだという。2023年9月の国際原子力機関(IAEA)総会で、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出について中国代表が「核汚染水」と呼び、海洋放出を「無責任な行為」と批判したのに対し、高市氏は直ちに「IAEAに加盟しながら事実に基づかない発信や突出した輸入規制をとっているのは中国のみだ」と反論した。
総裁選前の8月26日には中国軍の情報収集機が初めて我が国の領空侵犯をした。尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖では中国海警局の公船による領海侵入が繰り返されている。台湾をめぐっては米軍幹部が2027年までに中国が侵攻しかねないとの見方を示している。有事の際、次期総裁には自衛官の命を危険にさらす「覚悟」があるのか問われることになる。
各候補とも自衛隊を憲法に明記することの重要性を強調したが、「覚悟」を具現化する第一歩として、最優先で実現に取り組んでほしい。(了)