日本銀行は23,24の両日、金融政策決定会合を開く。現在0.25%の政策金利(金融政策の主要手段となっている「翌日物銀行間コール・レート」)の引き上げが行われるかどうかが焦点で、行われる場合には0.5%への引き上げとなろう。一般に、政策金利が引き上げられれば、住宅ローンの金利上昇、円高、株安、物価の下押しなど、広範囲に影響を及ぼす。したがって、政策金利の引き上げは景気の上昇または回復局面に行われるのが通常である。
●前のめりの正副総裁発言
今回、政策金利の引き上げが行われれば、昨年3月の「2%の物価安定目標が見通せる状況になった」との判断に基づくマイナス0.1%から0%~0.1%への引き上げ、同年7月の0.25%への引き上げに続くものである。前回の引き上げ以降、日銀は、足元の経済、物価、為替の情勢や賃上げの実態、今年の春闘での賃上げ見通し、トランプ次期米大統領の予想される経済政策を注意深く観察してきた。
その結果として、植田和男総裁や氷見野良三副総裁は最近の講演で、情勢を見極めた上で「1月の政策決定会合で利上げについて議論を進める」と前のめりの発言をした。また、経済専門家の間でも、追加利上げができる環境は整いつつあるとの意見が多くなっている。
●上がらない実質賃金
しかし、本当に利上げの環境は整いつつあるのだろうか。総合物価指数は昨年11月時点で前年同月比2.9%と2%の物価安定目標を超えているが、これは海外由来の物価高や円安要因も含まれており、物価上昇率が中長期的に消費需要によって2%程度で安定するかどうかは、今後の賃上げの動向次第である。
賃上げが期待された昨年でも、物価の影響を差し引いた実質賃金がプラスになったのは第3四半期のみであった。さらに、労働組合員だけではなく幅広い労働者の賃上げによって実質賃金がプラスとなり、広く将来生活に対する展望が開けないと、2%での物価安定は困難であろう。また、2024年の国際通貨基金(IMF)予想によると、我が国の実質GDP(国内総生産)成長率は0.3%しかなく、決して好調とは言えない。
●不透明な米経済政策
デフレ的でもなく、インフレ的でもない中立金利は、我が国では名目で0.5%程度との試算もある。それが正しければ、0.25%利上げしても0.5%に達するだけなので、実体経済に大きな影響はないとの見方もある。しかし、トランプ新政権の経済政策にも不透明なところが多く、今後の実質賃金の動向を見据えた上で金融政策を決めても遅くはない。(了)