韓国の学問の自由は守られた。大学講義の中で戦時中の慰安婦の強制連行を否定し、慰安婦は「売春の一種」に従事していたと発言したことで刑事訴追された柳錫春・前延世大学教授の無罪が確定した。2月13日、韓国最高裁判所は、この発言は名誉毀損罪に当たらないとした高裁判決を維持し、検察の上告を棄却した。
●強制連行の事例示せなかった検察
柳教授は2019年、延世大学の「発展社会学」講義の中で慰安婦問題について学生と討論する過程で、慰安婦は日本軍による強制連行の被害者ではなく、今日の韓国社会でも存在する経済的理由による「売春の一種」に従事していたと発言した。受講生が発言の録音をマスコミに持ち込んだ結果、柳教授は激しい非難を浴びて懲戒処分を受け、「発展社会学」講座は学期途中で大学当局によって打ち切られた。元慰安婦を支援する韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などが柳氏を刑事告発し、検察が2020年11月、柳氏を在宅起訴した。
検察は以下の三つの発言が名誉毀損罪に当たるとした。
1、「元日本軍慰安婦のおばあさんたちは、売春に従事するため自発的に慰安婦になった」という趣旨の虚偽事実の発言。
2、「挺対協が元慰安婦のおばあさんたちを教育し、日本軍に強制動員されたと証言させた」という趣旨の虚偽事実の発言。
3、「挺対協の役員たちは(親北朝鮮の)統合進歩党の幹部であり、挺対協は北朝鮮と連携していて、北朝鮮に追従している」という趣旨の虚偽事実の発言。
裁判過程で柳氏側は「自発的に慰安婦になったとは発言していない」「慰安婦が強制連行されたという歴史的事実はない」と主張し、李栄薫編著『反日種族主義』や拙著『よくわかる慰安婦問題』の韓国語版などを証拠として提出した。それに対して検察は強制連行の事例を示すことができなかった。
●保護された「学問の自由」
2024年1月、ソウル西部地裁は、慰安婦が売春に従事したとの上記1の発言は「講義中の討論で明らかにした個人的見解であり、学問の自由で保護されなければならない範疇にある」として無罪を言い渡した。2については罰金200万ウォンの有罪、3については無罪を宣告した。ただし、判決は、検察が起訴事実として明記した慰安婦の強制連行について実例を挙げられなかったことについては触れなかった。柳氏側と検察の双方が控訴したが、2024年10月、ソウル高裁はその両方を棄却した。今回、最高裁は原審判断に誤りはないとして判決を確定させた。
柳氏は「5年半という時間がかかったが、慰安婦の強制連行という一般の理解は間違っていることが立証された。私が何よりもうれしいのは、私の講義内容は法的に何の問題もないと裁判所に確認されたことだ。慰安婦の実態について、私のように考える根拠が十分にあると裁判所が判定してくれたので感謝している」と語った。(了)