インド世界問題評議会研究部長 ビジャイ・サクジャ
中国と一部東南アジア諸国の南シナ海における領有権争いの余波が、日本の沿岸に到達した。日本政府は、国際法規の順守、航行の自由など海洋安全保障に関するルールを協議するため、東アジア首脳会議の下部機関として「海洋安保会議」(仮称)を設ける構想にアジア・太平洋諸国の支持を求める方針と伝えられる。
この構想は、南シナ海の紛争の多国間解決に反対し、同海域での航行の自由に挑戦してきた中国にはっきり照準を絞ったものである。
外相が支持固めの旅
この関連で、玄葉光一郎外相は10月11~15日にシンガポール、マレーシア、インドネシアを訪問した。11月にジャカルタで開かれる東アジア首脳会議に先立つこの訪問で、玄葉外相は、域内諸国の海洋安保協力を強化する多国間交渉の場となる海洋安保会議の設立構想への支持をまとめようとしたとみられる。
日本は南シナ海の安保情勢の変化に対応して、フィリピンとの協力を強めてきた。9月には、野田佳彦首相が訪日したフィリピンのベニグノ・アキノ大統領に対し、日比両国は二国間関係を強化し、次官級の政策協議を「戦略対話」に格上げすべきだと伝えた。日本はまた、フィリピンの沿岸警備隊の強化で協力を申し出た。
さらに日本は10月末のグエン・タン・ズン・ベトナム首相の訪日時に、ベトナムとも海洋安保会議について話し合いたいと考えている。
インドのアントニー国防相とクリシュナ外相も、11月に訪日を予定している。12月には野田首相がインドを訪問する。インドと日本はこれまで、二国間、多国間の海洋協力の強化で緊密に連携しており、海洋安保会議構想がインドの政策担当者に支持されるのは間違いない。
インド海軍と日本の海上自衛隊は数カ月以内にインド洋で合同訓練を行う見通しだ。今春には米印日3国の合同訓練が東シナ海で計画されていたが、東日本大震災の発生で日本は参加を見送った経緯がある。
中国封じ込め?
中国は、米国、日本、インドなど第三国が南シナ海の紛争に介入することを拒絶してきた。南シナ海の問題を国際化するいかなる構想にも反対し、そうした動きがあればこの問題は一層複雑で面倒なものになると警告している。
海洋安保会議を新設するのはよい構想であり、米国はじめ幾つかのアジア・太平洋諸国に支持されることは間違いないが、中国はこれを「封じ込め」戦略の一つとみなしそうで、強く反発することは必至である。(了)
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第111回:日本の「海洋安保会議」構想に賛成する(ビジャイ・サクジャ)