インド世界問題評議会研究部長 ビジャイ・サクジャ
日印関係は順調なまま年を越した。インドのシン首相と野田佳彦首相は昨年12月28日にニューデリーで会談し、両国民の「絆」に基づき二国間関係と戦略的パートナーシップをさらに強化することを再確認した。
首脳会談で連携強化
両首脳は、二国間の経済協力と安全保障協力を深める幾つかの構想を発表した。双方は両国間の貿易を促進し、現在140億ドルにとどまっている貿易額を2014年までに250億ドルへ増やすことに合意した。野田首相は、雇用創出と都市間の結び付き改善を図るデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)に、今後5年間に45億ドルの資金を投下することも表明した。
東日本大震災と福島原子力発電所事故からの復興に巨額の財源を使う日本が、このような協力を打ち出してくれたことにインド側は強く感謝している。
安保分野では、海賊が出没するインド洋の安全強化のため、インド海軍と海上自衛隊が1月に合同海上訓練を実施する予定だ。インドと日本は「1982年の国連海洋法条約や関連する海洋国際法を含む普遍的に合意された国際法の諸原則」(共同声明)を守る決意を改めて確認し、南シナ海における中国の強引な主張に懸念を示した。
中国の柔軟姿勢は一時しのぎ
中国はそれが面白くなく、特に戦略家のグループから激しい反発があった。このグループは、インドと日本が中国を牽制するため手を組もうとしているとみなし、野田首相については、「米国を後ろ盾に、北東アジアから東南アジアまで弧を形成することで、中国を封じ込める戦略をつくり上げた」(周永生・外交学院国際関係研究所教授)と批判している。
中国は昨年12月19日にワシントンで開かれた日米印3国戦略対話にも神経を尖らせており、中国外務省報道官は3国対話が地域の平和と安定と発展を揺るがしてはならないとクギを刺した。
中国は「民主主義国の協調」が再構築されつつあることを当然ながら懸念している。遠からずオーストラリアが3国対話に加わり、2007年のベンガル湾での合同海軍演習で初めて概念が生まれた「民主主義4カ国協力体制」が再現するだろう。中国としても、南シナ海問題で法的拘束力のある行動規範の策定に向けて、領有権争いの他の当事国との協議に応ずるという融和的な態度を取らざるを得なかった。
中国が守勢に回ったように見えるかもしれないが、これは、中国が東南アジア諸国との関係を修復し、南シナ海問題で米国の圧力を和らげることを可能にするための一時しのぎの局面にすぎないと言うべきである。中国は威圧的な部分と協力的な部分を併せ持つ新たな構想を携えて、「民主主義国の協調」に挑むために戻ってくると予想してよい。(了)
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第123回:中国を牽制する日印の絆(ビジャイ・サクジャ)