公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

【第146回】やつぱり「解散・総選挙」だ

遠藤浩一 / 2012.06.18 (月)


国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一

消費税率引き上げを柱とする「社会保障・税一体改革関連法案」の与野党の修正合意を見届けて、17日夕、野田佳彦首相は20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するため羽田空港を飛び立つた。

英国のエコノミスト誌は「過去数代の自民党首相の業績を足したよりも大きな仕事を成し遂げようとしてゐる」と大絶賛だとか。何も決められなかつた日本が増税に向けて一歩を踏み出したのは、信用不安におののく欧州諸国の眼には、あるいは、快挙に映るのかもしれない。

予断許さぬ増税法案の行方
しかし、依然として予断を許す状況ではない。与野党合意こそ成つたものの、首相の留守中に民主党内で〝クーデター〟が起こる可能性を払拭できないからである。小沢一郎氏を中心とする反対派は、振り上げた拳を降ろさない。街頭で「増税の前にやるべきことがある」と大書したのぼりを立てて反対論を打つ議員もゐる。鳩山由紀夫元首相は「首相が強引に押し通せば党が分裂する」と牽制する。輿石東幹事長は相変わらずの面従腹背で、出発直前に首相から早期採決をするやう念を押されてゐるが、野田、小沢両氏の間で「洞ヶ峠」を決め込んでゐる。この人に調整能力を期待するのは無理といふものだ。

18日に開催される同党政策調査会合同会議での了承を得て、20日に衆議院一体改革特別委員会で可決、21日の会期末に衆院本会議通過、会期延長を決めた上で参議院に送付する―といふのが、官邸のスケジュールらしい。首相が一泊四日の強行スケジュールを組んだのも、20日までには帰国したいからである。

まづ18日の政調合同会議が注目される。反対派にとつては恰好かっこうの舞台だから、あくまでも抵抗して見せるだらう。首相不在のため執行部任せだが、これが頼りにならない。怒号が飛び交ふ中で〝了承〟を取り付けたところで、20日の衆院特委採決がどうなるか分からない。中野寛成特委委員長に強行採決を仕切る覚悟と能力があるのかどうかが問はれる。なんとか「起立多数」で通つたとしても、問題は21日の衆院本会議である。ここで民主党分派が「青票」を投じて公然と反対に回れば、仮に法案が通過したとしても、同党は事実上分裂状態になる。

首相に必要な解党の覚悟
それでも輿石氏は「分裂」を認めないだらう。「民主党」あらばこその「幹事長」だからである。「党内融和」のためには法案棚上げしかない。さうすると、折角せっかく会期を延長しても、同氏が仕切る参院で法案が成立するかどうかは分からない。

ここまで混乱が長引く原因は、結局のところ、消費増税を否定して政権を獲得した民主党政権にそれを主導する資格と力量はない、といふ一点に帰着する。輿石氏が固執する「党内融和」は、さうした矛盾の温存でしかない。野田氏が真に〝快挙〟を達成したいと期するならば、まづこの矛盾を解決しなければならない。それにはやはり、解散・総選挙で民意を問ひ直すにしくはないのである。首相は、民主党解党覚悟で、解散(その前提たる衆院定数是正も含む)に踏み切るべきである。(了)

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第146回:やつぱり「解散・総選挙」だ(遠藤浩一)