政府は22日、中国が東シナ海に建設中の海上施設の写真を公開した。現在、国際エネルギー市場は供給過剰であり、中国は2010年以降トルクメニスタンやカザフスタン等から天然ガスを大量に輸入している。そのため、エネルギー獲得の観点からは、中国がこの時期に東シナ海で2桁の数の石油リグ(掘削装置)を建設する理由は見当たらない。
●監視機器、兵器の配備もあり得る
2013年11月、中国は東シナ海に、尖閣諸島をも含み、日中中間線の日本側に大きく張り出す防空識別圏(ADIZ)を設定した。しかし、中国本土のレーダー基地からはADIZ全域を監視することができない。今回公表された海上施設に監視・偵察用の機器を設置すれば、ADIZのほぼ全域をカバーできる。
その種の機器としてはレーダーのほか、空中の電波を探知する装置(ESM)、電波傍受(SIGINT)施設、監視・偵察飛行を行うヘリコプターや無人機などがある。また、東シナ海は水深が浅いため有効利用できる可能性は低いが、水面下を探るソナーもある。
そうした機器は大別して、電波や音波を発信するアクティブセンサーと、目標が発する電波や音波を受信するのみのパッシブセンサーがあるが、探知される側にとっては、アクティブよりもパッシブの方が、探知されていることが分からないだけに質が悪い。パッシブは目標の方位が分かるだけで距離は分からないが、複数のパッシブを組み合わせれば目標の位置を割り出すこともできる。
監視・偵察機器以外に、目標を攻撃する武器が配備される可能性もある。大気圏外へ打ち出す弾道ミサイルは施設の強度上無理かもしれないが、低空を飛行する巡航ミサイルや対空兵器なら配備は可能である。
これらによって、ADIZ内に侵入して指示に従わない外国の航空機に対し「武力で防御的な緊急措置を講じる」とした中国の警告の実効性を高めることができる。
●日本の天然ガスが吸い取られる?
中国は、香港沖の西江油田で8キロ先の傾斜掘削(油井を真下ではなく、斜めに掘る方法)を行っている。日中中間線の中国側にあるガス田の白樺や樫(ともに日本名)、それと今回公表された海上施設の第3基は中間線まで5キロ以内にあるため、傾斜掘削により日本側の海底から天然ガスが吸い取られる可能性もある。白樺や樫に関してはガス層が中間線を跨いでいるという説もあり、それが事実なら、垂直掘削であっても日本側のガスが中国に吸い取られることになる。
中国は、岩礁の埋め立てを継続している南シナ海のみならず、海上施設の建設で東シナ海までも内海化しつつある。1992年に東・南シナ海のほぼ全域に自国の主権が及ぶとした領海法を制定し、人民解放軍内部の国防方針では2010年までに第一列島線(日本、台湾、フィリピン、ボルネオを結ぶ線)内の制海権確保を目標としていることから考えれば、内海化は当然かもしれない。(了)