韓国で封切られた映画「軍艦島」をソウル市内で見た。上下2回に分けて報告するが、本稿では、多くの歴史的事実が歪曲されていることを示す。
●事実の歪曲と捏造
第一に、朝鮮人徴用工の待遇である。映画では、奴隷のように船底や貨物列車で移送され、財産を没収され、乏しい食事とひどい寮をあてがわれ、殴打されながら重労働をさせられる。坑道で事故が起きると、他の坑道を守るために出口が塞がれ、朝鮮人鉱夫は見殺しにされる。
この描写は、長崎県・端島(軍艦島の正式名称)の元住民らの「(日本人と朝鮮人は)同じコミュニティーで仲良く暮していた」という証言と矛盾するし、映画の時代設定と同時期の徴用工の証言とも懸け離れている。広島の軍需工場で徴用工として働いた鄭忠海氏は、新築の寮、新しい布団、量質ともに満足できる食事が提供され、毎晩、牡蠣などをつまみにして酒盛りができたと証言している。(拙著『日韓歴史問題の真実』)
第二に、朝鮮人慰安婦の待遇についてだ。映画では、慰安婦は工場で働くとだまされ、軍人らに殴られながら遊郭に連れて行かれる。そのうち1人は端島に来る前、中国の慰安所で働かされたと話すが、そこで逆らった同僚が釘の板の上でころがされ体中が血だらけになって殺されるのを目撃し、絶望して自殺を図った罰として全身に入れ墨を入れられる。
この描写は、軍が奴隷狩りのように慰安婦を集めたという故吉田清治氏の虚偽の証言や、国連人権委員会特別報告者クマラスワミ氏の報告に裏付けをとらずに引用された北朝鮮在住元慰安婦の証言などを下敷きにしていることがすぐ分かる。朝鮮人労務者が動員された現場近くには、朝鮮人女性を置く遊郭が労務管理上の便宜として置かれることがあった。端島の遊郭に朝鮮人女性がいたなら、それは主として言葉の通じる朝鮮人鉱夫のために導入されたものだ。朝鮮人鉱夫も比較的高い賃金をもらっていたから、遊郭遊びができた。
第三に、映画では朝鮮人鉱夫虐殺計画があったことになっている。鉱夫虐待の責任を追及されることを恐れた日本人の企業幹部が、全朝鮮人を坑道に埋めて殺そうとする。
これは全くの捏造だ。このような計画があれば重大な犯罪だが、そうした例は実際には一つも存在しない。当時、国家総動員体制の中、全企業が戦争に協力したが、終戦後、端島では「三菱の船で朝鮮人たちを半島まで送り届けた」と元住民は言っている。
●必要な事実に基づく反論
映画の冒頭で次のような字幕が出る。
<本映像は「対日抗争期強制動員被害者調査および強制動員被害者等支援委員会」資料と、当時の実際の記事やインタビューなどを参考にして製作した>
この委員会は盧武鉉政権時代に特別法に基づき作られた政府機関だ。2004年から11年かけて大々的な「調査」を行い、多数の報告書が刊行され、釜山には「国立日帝強制動員歴史館」が設立された。日本は官民が協力してその全体像を把握し、虚偽に対しては事実に基づく体系的反論をしなければならない。急がれるのは日本側関係者の証言収集だ。(了)
【第458回・特別版】映画「軍艦島」の恐ろしさ(下)はこちらから