9月11日から約1週間、北朝鮮による拉致被害者家族会、救う会、拉致議連の合同訪米団の一員としてワシントン、ニューヨークを訪れた。私は救う会副会長の立場で参加した。
我々が強調したのは、以下の2点である。
1、解決すべき「北朝鮮問題」の中に、核・ミサイルと並んで、人権も含まれねばならない。拉致は人権問題の重要な一部である。
2、その全てが解決されるまで、北朝鮮に対する圧力を強め続けねばならない。
●圧力強化による体制転換が理想
北朝鮮問題は、北が核ミサイルを実戦配備する前に、戦争に至らない形で、すなわち平和的に解決されることが望ましい。しかし、平和的解決は北朝鮮との対話とイコールではない。むしろ相反する。平和的解決の理想型は、圧力強化で北朝鮮に体制転換を起こさせることであって、中途半端に折り合うことではない。
ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のポティンジャー上級アジア部長は「北朝鮮と公的な協議を始めると、必ず制裁を緩めるべきだという圧力がかかってくる。従って、公的対話を行ってはならず、経済的、政治的圧力を徹底・強化すべきだ」と強調した。正しい認識であり、訪米団は同意を表明した。
情報を得るため北朝鮮と水面下の接触はあってよいが、6者協議(日米韓中ロと北朝鮮で構成)に代表される公的対話は、中ロが一段階ごとに制裁緩和を求め、北朝鮮の時間稼ぎを許す枠組みとなる。ブッシュ政権(2代目)のライス国務長官とヒル国務次官補のコンビがせっかく効いていた金融制裁を解除し、北朝鮮に核ミサイル開発継続の資金を提供することになった失敗を繰り返してはならない。
●軍事攻撃なら日本は支持
幸い、国務省、国防総省高官との面談でも、北朝鮮に対する経済的、政治的圧力の強化こそが平和的解決の基礎という認識が明確に聞かれた。
安倍晋三首相も9月18日付のニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「外交の優先や対話の重要性の強調は、北朝鮮に対しては意味がない」と指摘し、「今は北に最大限の圧力をかけるべき時だ」と述べている。この点で日米首脳間に何ら齟齬がないことが今回の訪米でも確認できた。
私は、NSCや国防総省で、中ロの妨害を排除しながらの経済制裁では北朝鮮の核ミサイルの実戦配備を防げないと米国が判断し、軍事オプションの発動に踏み切る場合、日本政府はそれを全面的に支持し、支援すると確信していると米側に伝えた。実際、安倍首相自身、「全てのオプションがテーブルの上にあるという米国の立場を強く支持する」とニューヨーク・タイムズへの寄稿でも改めて強調している。
ティラーソン米国務長官が言うように、中国は北朝鮮の石油の大部分を供給し、ロシアは外国での出稼ぎを強制されている北朝鮮労働者の最大の雇用主だ。北朝鮮を支え、軍事オプションの発動を余儀なくさせる国家があるとすれば、それは中ロである。しかし、パシフィスト(反軍平和主義者)は批判の矛先を日米両国政府に向けてこよう。それに対する言論戦も重要になる。(了)