理事長 櫻井よしこ
「今日の政治の最大の問題は、金のかかる選挙である。そして、政治資金をめぐって腐敗が起き、政治家の倫理観が問われている」今から30年前、小沢一郎氏は、父、佐重喜氏を偲んで纏められた『人間小澤佐重喜』(小沢一郎後援会・陸山会発行)の中で、こう書いた。政治資金に起因する腐敗を防ぎ、政治倫理を正しく保つために、氏が唱えた改革が、選挙制度の改正、即ち小選挙区制の導入と政治資金の公営化だった。それはまた、佐重喜氏の主張と重なるものでもあった。
父子二代にわたって執念を燃やした小選挙区制は実現された。そして今、民主党政権が誕生し、その中心に小沢氏が君臨する。では、果たして政治資金を巡る腐敗は消えたのか、政治家の倫理観は、以前に較べて確立されたのか。明らかに否である。
制度の盲点突き助成金蓄積
氏が 拘り続けた政治資金の公営化は、結果として小沢氏の権力の強化をもたらした。氏が新党を創り、それを解散して次の新党に移る度、億単位の政党助成金が小沢氏の政治資金団体に流入した。氏の手元で動いた理解出来ない政治資金はなんと21億円規模に上るという。そうした資金の動かし方は、現時点では、氏が主張するように「合法的」だそうだ。だが、その合法性は、政党助成制度の盲点を突いたものでしかない。
1995年に施行された同制度は94年に成立した政治改革関連4法によるもので、4法を主導したのが小沢氏だった。政党助成制度の細目まで知り尽くした氏であればこそ、かいくぐることの出来た法の抜け穴があったわけだ。
嘆かわしい政治倫理の欠如
国民の一体誰が、税から払われる政党助成金が小沢氏の不動産購入資金の一部となるような事態を想像しただろうか。氏は、自身の死に際しては、それらは社会に還元すると語ったが、それがどのように「法的」に担保されているのかは不明である。その限りにおいて、氏の弁明は日本国民の常識・良識には馴染まない。いわんや、氏が政治改革で目指したはずの「政治家の倫理観」にも悖る。有体に言えば恥知らずな行為である。
小沢氏も鳩山由紀夫首相も、現時点では法に問われることはなくなった。しかし、国家の指導者二人が揃って疑わしい金銭にまみれ、倫理観を欠いたまま、尚、日本の指導者の地位にとどまっていることは、国際社会における日本の恥である。(了)
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第24回:小沢氏の君臨は日本の恥(櫻井よしこ)