公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

有元隆志

【第1018回】外相G20欠席で問われる参院の存在意義

有元隆志 / 2023.03.06 (月)


国基研企画委員・月刊正論発行人 有元隆志

 

 林芳正外相が参院審議出席のため、インドで開かれた20カ国・地域(G20)外相会合を欠席したことで浮かび上がるのは、参院の存在意義は何かという根本的な疑問だ。
 自民党の世耕弘成参院幹事長は2月28日の記者会見で、参院予算委員会での基本的質疑について「参院審議の中でも非常に重要度が高い」と強調した。同質疑には首相と全閣僚が出席すべきで、林外相のG20欠席もやむを得ないという認識を示したものだが、首相が外相の代わりに答弁すればいい。実のところ、3月1日の審議で林外相の答弁時間はわずか53秒だった。
 世耕氏は3月3日の会見では官邸・外務省の根回し不足を批判したが、官房副長官、経産相と政府の要職を務めた世耕氏の発言とは思えない。むしろ政府側に外相のG20出席を促すのが世耕氏の役目ではないのか。会議出席に向けて国会の理解を得ようとする熱意に欠け、失態を世界にさらした岸田文雄首相や林外相にも猛省を求めたい。

 ●衆院のカーボンコピー
 2023年度予算案は2月28日の衆院本会議で可決された。憲法の衆院優越規定により参院送付から30日で自然成立するため、22年度内の成立が確定している。個々の議員が工夫を凝らしても参院審議は事実上「消化試合」である。ここで問われるのは参院議員の個々の資質ではない。参院議員の中には衆院議員よりも優れた議員もいる。衆院と違って解散がないので、じっくりと6年間政策課題に取り組めるという利点もある。
 それでも「衆院のカーボンコピー」と揶揄やゆされるように、衆院審議と同じことを繰り返す必要はあるのか。例えば、首相の毎年1月に召集される通常国会で行う施政方針演説や、臨時国会などで行う所信表明はいまだに衆参両院でそれぞれ行われている。手始めに1回で済ませるべきではないか。また、現行憲法では、首相指名が両院で異なるときは衆院の議決が優先することになっており、参院で首相を指名する意味があるのか問われてきた。

 ●選挙制度を見直せ
 今から30年前に盛り上がった政治改革論議では、衆院の選挙制度変更に議論が集中し、衆参両院の役割分担の見直しが不十分だった。その結果、衆参両院共に選挙区と比例代表の組み合わせという世界にも例を見ないおかしな選挙制度となってしまった。
 衆院は完全小選挙区制にし、参院は米上院のように47都道府県から各2人を選び定数を94人にする。あるいは政権と距離を置くため、参院は首相指名を行わず、入閣もしない。国会同意人事を原則として参院の専権事項にする。そういう具合に抜本的に仕組みを変えないと、いつまでたっても両院は似たような存在であり続ける。国会議員は地位に安住せず、率先して改革を成し遂げるべきだ。(了)