公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

  • HOME
  • 今週の直言
  • 【第1146回】同性婚を法制化する民法改正案に反対する
髙池勝彦

【第1146回】同性婚を法制化する民法改正案に反対する

髙池勝彦 / 2024.05.13 (月)


国基研副理事長・弁護士 髙池勝彦

 

 立憲民主党は昨年3月6日、同性婚を法制化するための民法改正案(婚姻平等法案)を衆院に提出した。この法案の審議はなされず、棚ざらしとなつてゐるやうであるが、本年3月14日、民法や戸籍法が同性婚を認めないのは憲法違反であるといふ札幌高裁の判決が出たことで、同党は色めき立つてゐるかもしれない。そこで、同性婚容認反対の意見を改めて表明しておきたい。

 ●立憲民主党案の問題点
 同法案の要綱は次の3点である。
 1 同性婚の法制化
 2 特別養子縁組その他の養子縁組に関する規定の整備
 3 所要の規定の整備(同性婚を認めることに伴い、文言を性中立的なものに改正)
 1については、札幌高裁判決に関し「国基研ろんだん」(3月19日付)で述べたとほりである。繰り返すと、婚姻は異性間での家族形成を目的とした制度であるべきであり、同性愛者についての差別禁止などについては別に考へるべきである。確かに同性婚を認める国が増えて来てはゐるが、それは同性愛を犯罪として処罰してきたことに対する反動の面などがあり、それを我が国に適用すべきではない。問題は同性愛者に対する差別や不都合をどうすべきかであり、差別や不都合をなくすために同性婚を認めるといふことに直結するわけではない。
 2については、「特別養子縁組」とは、子供の福祉の増進を図るために、養子となる子の実親との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度であり、養親になることを望む夫婦の請求に対し、厳格な要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けて認められるものである。同性婚を認めることになると、男と女の「夫婦」がなくなり、「婚姻の当事者」といふことになる。それに伴つて、男同士または女同士の「婚姻の当事者」にも特別養子縁組を認めようといふのである。
 しかし、これは本末転倒の議論である。子供の福祉のために特別養子縁組が創設されたのであり、夫婦や「婚姻の当事者」のために創設されたのではない。子供はペットとは異なる。子供は実親である「夫婦」に育てられることが原則で、何らかの事情のある場合、子供の福祉のために「夫婦」の養子が認められるのである。これを男同士または女同士の「婚姻の当事者」の養子にする必要はないし、認めるべきではない。
 3については、「夫婦」「夫」「妻」を「婚姻の当事者」に、「父母」「父」「母」を「親」にそれぞれ改正するといつた語彙の問題であるから、付属的な問題である。

 ●立憲主義に立ち戻れ
 立憲民主党の婚姻平等法案の大問題は、憲法改正にまつたく触れてゐないことである。憲法24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」とあり、明らかに婚姻が異性間において成立するものであることを示してゐるから、「両性」の意味を「同性」も含むなどと解釈することは、憲法判断として、文言から甚だしく逸脱するものである。
 同性婚を認める立場に立つとしても、憲法改正を求めるべきである。立憲民主党の法案は立憲主義に反する。(了)