中国の不動産バブル崩壊不況の底が見えない。共産党が市場経済を操縦する特異な経済システムが機能不全に陥り、習近平党政権が国内向けに打つ手はことごとく失敗している。その代わり強めるのは、ダンピング輸出、部品や材料のサプライチェーン独占力を武器にした対外威圧、日本企業など外資の技術奪取である。どれも国際ルールを無視し、世界経済をかく乱する。
日本では27日の衆院選で与党が大敗し、政局の混乱が懸念されるが、産業の脱中国依存は与野党問わず政治の重大責任だ。政府は主要7カ国(G7)協調を通じて習政権の圧力に対抗する準備を重ねるべきである。
●八方塞がりの中国経済
習政権は12日にデフレ不況対策として大型の財政出動を示唆したが、金額を明示できないままだ。外国からの投融資が激減しているために外貨の流入が細り、外貨に依存する通貨人民元の金融の大幅拡張が困難になっているからだ。不動産開発に代わる成長の牽引役として政府補助金を投入してきた電気自動車(EV)、太陽光パネルなど新産業分野も、生産過剰とダンピング輸出で収益難に陥っている。中国当局発表でも、工業利益の減少が加速し、9月は前年同期比で27%減った。高まる中国市場リスクをみて、西側企業の大半が対中新規投資を止め、撤退を急いでいる。対中直接投資はこの6月までの1年間の合計で、前年比で100分の1にまで落ち込んだ。
米国の大統領選ではハリス、トランプ両候補が対中高関税案を競っている。欧州も中国製EVなどの輸入制限に踏み切った。新興国の多くも、不当廉売の中国製品に反発を強め始めている。中国経済はまさに八方塞がりの様相を呈している。
●ルール無視の威圧、技術奪取、ダンピング
だが、習政権は転んでもただでは起きない。中国の強みはサプライチェーンの根幹にある重要鉱物、部品、材料の独占にある。昨年以来、EV用電池の材料である黒鉛、ハイテク製品に欠かせないレアアース、レアメタルなどの供給制限をちらつかせている。この威圧によって、対中依存度が極めて高い日本の自動車メーカーなどの企業をひざまずかせ、中国市場につなぎとめるばかりか、最先端技術の提供を催促している。さらに、米欧の対中輸入制限に対しても報復で応じる。ダンピング輸出によって世界市場シェアを確保しようとする。一連の国際貿易秩序無視の攻勢は加速する一方である。
日本経済再生のカギは、中国に負けない産業競争力を維持し、高めることにある。衆院選では中国問題は争点にもならなかった。政治の空白は許されない。(了)