2020年11月の記事一覧
【第741回】「尖閣」で中国外相の暴言になぜ反論しない
産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志 中国の王毅外相訪日で鮮明になったことがある。一つ目は習近平国家主席を国賓として招くべきではないということ。二つ目は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛にかける政府・自民党の気迫の欠如だ。 ●習主席国賓来日は中止に 王外相の訪日は、延期となった習主席の国賓来日の環境整備が本来の目的だった。ところが、一連の発言によって真...
【第740回・特別版】RCEP署名で交錯した関係国の思惑
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日中韓、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する地域包括的経済連携協定(RCEP)が署名された。人口、国内総生産(GDP)ともに世界の3割を占める巨大経済圏ができた。世界の内向き志向の中で、貿易自由化の進展は評価できる。しかし過大評価は禁物だ。貿易自由化のレベルは環太平洋経済連携協定(TPP)に比べてかなり見劣りする。関...
【第739回】「自由で開かれた」抜きでインド太平洋を語るな
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 14日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を終えた記者会見での菅義偉首相の発言が波紋を呼んでいる。これまでの「自由で開かれたインド太平洋」と言わずに、「平和で繁栄したインド太平洋」と言い換えたのだ。 ●価値観外交のキーワード 「平和と繁栄」に反対する者はいないだろう。問題はそれをどうやって達成するかだ。軍事力を背...
【第738回】尖閣確保へ日本版「三戦」を
産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志 中国海警局の公船の度重なる周辺海域侵入によって尖閣諸島(沖縄県石垣市)が危険にさらされている。尖閣の実効支配を確たるものにするため、見習うべき国がある。ほかならぬ中国である。中国共産党は2003年に人民解放軍政治工作条例を改正し、世論戦、心理戦、法律戦の「三戦」による戦術で敵の力を削ぐよう指示している。日本版「三戦」で、攻...
【第737回・特別版】バイデン政権と「グリーン」で戦略的協力を
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米大統領選でバイデン氏の当選が確実になった。バイデン政権における日本の対米戦略を考えるうえで、カギの一つは環境問題だ。バイデン氏は2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを打ち出し、地球温暖化対策を目玉政策としている。具体的には、気候変動パリ協定に早期に復帰したうえで、クリーンエネルギーへの投資と環境規制の強化に力点を置く。 ...
【第736回】米中の政治混乱は日本の試練
産経新聞台北支局長 矢板明夫 米民主党のバイデン前副大統領が7日、大統領選挙の勝利宣言を行った。「開票に不正があった」と主張するトランプ大統領(共和)との法廷闘争を控え、米国の混乱はしばらく続きそうだが、中国の習近平国家主席はバイデン氏の当選確実に胸をなで下ろしているに違いない。トランプ政権との約2年にわたる対立で、習政権は内政、外交ともに大きなダメージを受け、中国の外交関...
【第735回・特別版】2050年脱炭素化には原子力活用しかない
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 10月26日、菅義偉首相は所信表明演説で、「2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。この基本方針には野党も表立って反論できない。加えて、菅首相は「安全最優先で原子力政策を進める」と明言した。脱炭素化に原子力発電所が必要なことをにじませ、安全な原発の新増設への端緒をつくろうとす...
【第734回】中台関係は「準戦争状態」
産経新聞台北支局長 矢板明夫 台湾の蔡英文総統は10月31日、国防部長(国防相)や外交部長(外相)ら政権の主要幹部が出席する「国家安全会議」を開き、台湾海峡で軍事的緊張が高まっていることについて「様々な事態を想定して、万全な準備を行うよう」と指示した。 中国軍は今年夏以降、台湾海峡周辺で軍事演習を何度も実施しただけではなく、軍用機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に頻繁に侵...