2021年2月の記事一覧
【第766回】米のWHO復帰は台湾参加を条件にすべきだった
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 バイデン米政権が世界保健機構(WHO)への復帰を決めた。予想された動きだが、台湾のWHO総会参加などの条件を付けることなく簡単に復帰した姿勢には、強い危惧の念を抱かざるを得ない。 トランプ政権は昨年7月6日、中国に支配され、本来の責任を果たさず、改革の意思も見せないWHOとの関係に終止符を打つとして、1年後に脱退する旨...
【第765回】英空母とクアッドの共同訓練を提案する
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 英国のジョンソン首相は昨年11月、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が英国や同盟国の部隊を率いながらインド洋、東アジア地域に展開する計画を発表した。その背景には1985年の英中共同声明に違反して香港を中国共産党体制下に置こうとする習近平政権に対する反発があるものと思われる。 この予行演習として、昨年秋に同空母は英空軍のF35B短距離離陸...
【第764回】ワクチン外交に勝てない日本の悲劇
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 中国が自ら開発した新型コロナウイルス・ワクチンを開発途上国などにばらまく「ワクチン外交」を積極的に展開している。欧米のワクチンを入手できない諸国がこれに飛びついており、コロナ禍がうまく終息すれば中国の国際的影響力が飛躍的に拡大する結果を招きかねない。 中国外務省によると、2月8日時点で中国が国産ワクチンの無償供与を予定している国は53カ国...
【第763回】北京五輪の開催地変更を求めよ
国基研理事長 櫻井よしこ 国際平和と友好の象徴、スポーツの祭典とされながら、五輪はいつも高度に政治利用されてきた。いま留意すべきは、約1年後、北京冬季五輪の成功を介して勢力拡大を目指す中国共産党政権の目論見である。 東京五輪・パラリンピック組織委員会前会長、森喜朗氏の発言への内外の激しい反発は、北京五輪に敷衍ふえんして考えてこそ、意味がある。「女性の多い会議は時間がかか...
【第762回】バイデン政権の対中強硬は言葉だけか?
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 バイデン米大統領と習近平中国国家主席は先週、初の電話協議をした。米側発表によると、バイデン大統領は、香港、新疆ウイグルの人権問題や台湾への軍事的圧力、不公正な経済慣行などの懸念を伝えたという。対する中国側の発表は、米中対話の枠組みの再構築を米側に呼びかけたことを強調する。 バイデン大統領がまず強硬姿勢を示しておくことは、超党派で対...
【第761回】米国はミャンマー政策で失敗を重ねるな
インド政策研究センター教授 ブラーマ・チェラニー 独立を達成して以来、少数民族の反乱に悩まされてきた多民族国家ミャンマーで、唯一機能した国家機関が軍であった。しかし、10年前に軍部が段階的な民主化プロセスを開始した後も、欧米は軍部との関係構築に注力しなかった。欧米はアウン・サン・スー・チー氏だけに政治投資をし、スー・チー氏を事実上の聖人に祭り上げた後、イスラム教徒少数民族ロ...
【第760回】中国海警法に即時対応せよ
国基研理事・東海大学教授 山田吉彦 2月1日、中国は海警法を施行し、「中華民族の偉大なる復興」を実現するための実力行使に動き出した。この法律は、国連海洋法条約を基盤とした海洋秩序への挑戦であり、我が国をはじめとした近隣諸国への脅迫状である。中国共産党政権は、漢民族の生活空間を拡大するために他民族の住む土地を支配下に組み入れ、さらに海域まで侵攻しているのである。 海警法で...
【第759回】尖閣ではっきりした憲法の限界
国基研副理事長 田久保忠衛 尖閣諸島の実効支配へ向けた動きを半世紀にわたってジリジリと強化している中国と、それに口先だけで反対する日本政府との差が、ついにここまで来てしまったかと複雑な思いがする。日本の海上保安庁に当たる中国の海警局に「管轄海域」で違法行為を取り締まるための退去命令や武器使用の権限があることを明記した海警法が2月1日付で施行された。 中国が領有権を勝手に...