2023年1月の記事一覧
【第1005回】岸田首相がウクライナに提供できるもの
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 岸田文雄首相がウクライナ訪問を検討している。5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国でありながら、G7の中で唯一、ウクライナのゼレンスキー大統領との対面での会談を行っていないため訪問したいという。 岸田首相は1月25日の衆院本会議で、ウクライナ訪問について「諸般の事情を踏まえて検討する」と語った。首相は6日...
【第1004回】「ピークパワーの罠」に向かう中国
国基研企画委員兼研究員 湯浅博 中国の人口が61年ぶりに減少に転じた。国連の「世界人口予測」や中国社会科学院の予想より8年も早い頭打ちである。同時に2022年の国内総生産(GDP)の伸びも、政府目標の5.5%を大きく下回って景気減速が明らかになった。中国の労働人口はすでに減少しており、今後、高齢者数を上乗せしながら若年者数を減らしていく。この歴史的な構造変化により、習近平国...
【第1003回】日本はいわれのない責任を引き受けるな
国基研企画委員 荒木信子 戦時中の朝鮮人労働者による損害賠償請求訴訟で、被告とされた日本企業の支払いを韓国行政安全省傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が肩代わりするという案が今月、韓国側から発表された。 肩代わりの方法として「併存的債務引き受け」という形が提示されているが、結局は日本企業に債務があることを前提としており、肩代わりのための「契約」を企業が財団と結...
【第1002回】安保3文書履行に早くも暗雲
国基研評議員兼企画委員 太田文雄 1月11日にワシントンで行われた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2+2)の共同発表には「日本の南西諸島を含む地域において、日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増加させることにコミットした 」とある。日本の閣僚がコミットした以上、米側はもう使えると判断したのだろう。直後の13日に米海兵隊が沖縄県の下地島空港(宮古島市...
【第1001回】変貌する日米同盟、日本の役割増す
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 バイデン米大統領は13日の日米首脳会談で、反撃能力の保有を含む日本政府の抜本的な防衛力強化を高く評価した。会談冒頭、バイデン氏は「日本による防衛費の歴史的な増額や新たな国家安全保障戦略によって、我々は軍事同盟を現代化している」と語った。「現代化(modernize)」は最近の日米同盟のキーワードとなっている。日本の役割が増し、同...
【第1000回】日本人よ、雄々しく立ち上がれ
国基研理事長 櫻井よしこ 令和5年の日本と世界の課題は、台湾を第二のウクライナにさせないことだ。中国の台湾侵攻は必然的に日本侵攻になる。私たちは十分な軍事力と経済力で強い抑止力を構築しなければならない。同時に、日本はカーター米政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官だったブレジンスキー氏が日本を「米国の事実上の被保護国」と呼んだ状況を脱しなければならない。そのためには安全保障...
【第999回】中国の不当なビザ発給停止
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 中国発の新型コロナウイルス拡散の脅威が再び高まる中で、日本の水際対策強化に対する中国の報復措置は、二重の意味で不当である。第一に、中国の日本人へのビザ(査証)新規発給停止は、日本が中国からの入国者に入国時検査と陰性証明書提示を義務付けたことに対するもので、著しくバランスを欠く。第二に、中国の報復措置の対象は日本と韓国だけで、同様の水際対策を取...
【第998回】朝鮮半島に局地戦と大飢饉の暗い影
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 朝鮮半島で再び軍事的緊張が高まっている。2017年の緊張では核実験とミサイル発射で挑発を続けた金正恩総書記に対してトランプ米大統領が軍事的圧力をかけたが、今回は尹錫悦韓国大統領が一戦辞さずの覚悟を示している。緊張はどこまで高まるのか。関係者は、北朝鮮が今年中に南北境界線近くの延坪島などで局地戦を仕掛ける危険があると述べた。 ...