国基研企画委員・評論家 潮匡人
新しい防衛相に北澤俊美参院議員が就いた。9月17日夕刻、新大臣は防衛省で初の臨時会見を行なった。その驚くべき発言内容が、防衛省公式サイトにアップされている。
以下は、その際の質疑応答である。
やはり繰り返された嘘
自衛隊のインド洋での補給支援活動に関し、「『延長しない』という判断をされた理由、この政策的な理由というのはどのようなところにあるのでしょうか」と問われ、こう答えた。
「それは、民主党がずっと言い続けてきたことでもあるし、法律の時効を迎えるわけですから継続はしない。継続をしないというよりは、新たな法律は作らない。これはマニフェストにもちゃんと掲載してあります」
真っ赤な嘘である。民主党のマニフェストに、そのようなことは一言も書かかれていない。「自立した外交」「緊密で対等な日米同盟関係」とはあるが、「延長しない」方針は何ら示されていない。どこに「ちゃんと掲載」してあるのか。「民主党政策集INDEX2009」にも書いてない。北澤防衛相はマニフェストも政策集も読んでない。
かつて民主党の小沢一郎代表(当時)も同じ嘘をついた。安倍首相辞任表明直後の記者会見で「テロ特措法につきましても(中略)反対をマニフェストにおいても、きちんと国民に示しております」と明言した。だが、当時の民主党マニフェストにも、そんなことは書かれていなかった。8月5日の当研究所の月例研究会「今、日本の分水嶺~国基研が政権選択を問う~」で私が予言したとおり、民主党は嘘を繰り返した。
部下の活動を評価しない上司
それだけではない。「大臣から見て補給活動については、活動そのものを評価しないということなのですか」「大臣から見て活動に対する評価が低いということなのでしょうか」と聞かれ、「おっしゃるとおりです。『成果が上がっている』『感謝している』という声も良く聞きますけれども、極めて限定的なところでそういう評価になっていると私は認識しております」と明言した。以上も事実に反する。国際社会の「感謝」は決して「限定的」ではない。
いや、事実関係以前の問題として、防衛相にあるまじき暴言であろう。上司が部下の「活動そのものを評価しない」のだ。灼熱のインド洋上で長期間、リスクと難度の高い補給活動に従事する部下隊員を思いやる姿勢は微塵も感じられない。
その他、集団的自衛権問題をはじめ、北澤防衛相は事実にも道理にも反する粗雑な発言を並べ立てた。私が知る限り、史上最低の大臣会見である。(了)
PDFファイルはこちらから
第5回:史上最低の新防衛相会見(潮匡人)