公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

田久保忠衛

【第516回】米の対中カウンターブローは進行中

田久保忠衛 / 2018.05.28 (月)


国基研副理事長 田久保忠衛

 

 米国屈指のシンクタンクである外交問題評議会のアジア研究部長、エリザベス・エコノミー女史がフォーリン・アフェアーズ誌5~6月号に「中国の新革命」と題し、説得力に富む文章を書いている。毛沢東の第一革命、鄧小平の第二革命に続く習近平国家主席の第三革命の特徴を「自由主義的な世界秩序の中で中国はリーダーシップを手にしようとしている非自由主義国家である」と見事に指摘している。

 ●相互主義唱えたエコノミー論文
 現国際秩序の恩恵にどっぷりつかり、世界第二の経済大国、軍事大国の座を保持したままルールだけは我流を通そうとするから、中国批判は増大する。先の党大会で習主席が中国脅威論を打ち消そうと躍起になっていたのは、自国の態度が原因になって国際社会で評判を落としながら、打つ手のないジレンマを表していた。
 その中国をどうしたらいいのか。エコノミー女史は相互主義(reciprocity)が必要だと説く。①米国はアジア太平洋地域において強力な軍事力を構築し、自由主義の原則を高らかに唱えよ②「自由で開かれたインド太平洋」構想はその一つだ③北京による台湾孤立化に対抗して、台湾支持をはっきりさせよ④南シナ海では航行自由の「合同作戦」を展開せよ⑤環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に復帰せよ―など、数々の提案をトランプ大統領に行っている。中国がパンチを打ってきたら、すかさずカウンターブローを出せ、というのが相互主義の意味らしい。

 ●トランプ政権も強硬姿勢に転換
 実はエコノミー女史の提案をトランプ政権は実行に移し始めている。航行の自由作戦は米国単独ながら過去1年間に着実に実施されている。米国と台湾の高官がワシントンと台北を相互に訪問し、安全保障問題を含めた意見交換をすることを可能にした台湾旅行法が米上院の全会一致で可決された。トランプ大統領と蔡英文台湾総統の会談はできるようになったのだ。中国が外国の民間航空会社に、台湾を中国の一部としてウェブサイトなどに表記するよう要求した途端に、ホワイトハウスは「全体主義的なばかげた行為」であり「威嚇と強制をやめるべきだ」との声明(5月5日付)を出した。米国防総省は5月23日、今夏に予定している環太平洋合同演習(リムパック)への中国の参加を拒否した。こうした一連の米国の行動が何を意味するか。
 オバマ前政権の国務次官補(東アジア太平洋担当)だったカート・キャンベル氏が前号のフォーリン・アフェアーズ誌で痛烈な中国批判を展開している。米国がリベラル派も保守派も中国警戒で一致し始めた事実は、わきまえておかなければならない。(了)