米バンダービルト大学教授 ジェームズ・E・アワー
尖閣防衛を米軍に頼るな
「米国が尖閣諸島のために戦うとは思いませんね」―。最近、私が参加した東京でのセミナーで、中東の学者がそう言った。私は、その見方は誤りであり、クリントン米国務長官が尖閣諸島について、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象になると明言したことを説明した。
「でも、日本が尖閣防衛の措置を講じなければ、米国は単独で防衛するでしょうか」とこの学者は疑問を呈した。私は、同盟国が自ら何もしなければ、米国がその同盟国の防衛に出動することは難しいと認めざるを得なかった。
日本が尖閣諸島を自国領であると主張する法的根拠は強固だ。しかし、領土維持の決意をはっきり示すには、領土防衛のために血を流す覚悟がなければならない。
航行自由確保へ日米合同巡回を
尖閣諸島に劣らず重要なのは、中国が南シナ海を「中国の核心的利益」と宣言したことであり、菅政権はこれをもっと深刻にとらえるべきだ。中国のこの宣言は、日米など太平洋諸国の繁栄に死活的重要性を持つ南シナ海への出入りを統制する権利が中国にあるという認識を明らかに示している。
従って、日米両国政府は、中国への威嚇としてではなく、航行の自由への両国の貢献を示すものとして、「航行自由のための日米偵察・海空パトロール」体制をつくり、大阪からフィリピン北方のバシー海峡までのシーレーン(海上交通路)と、南シナ海の海運ルートをカバー対象とすることを真剣に検討すべきである。
真のパートナーになるために
中国はそうした試みに不満を表明するかもしれないが、日米は自由通航以外にいかなる要求も行わないことを明確にすればよい。日米側には、中国を含む関係諸国のシーレーン利用を管理ないし制限するつもりもない。
日本は、尖閣諸島はじめ自国領土を軍事的脅威から防衛する上で米国にパートナーになってほしいと考えているが、南シナ海で日本は米国並みか米国以上の利益を有している。
それゆえ、日本は南シナ海での偵察活動に進んで参加すべきだ。偵察活動は日本の現行法で可能だし、自衛隊にはその能力がある。とりわけ米第7艦隊との協力でその能力は生かせる。日本は米国のパートナーになることを望んでいると思うが、真のパートナーになるためには、自ら進んで参加しなければならない。(了)
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第63回:南シナ海に自衛隊を派遣せよ(ジェームズ・E・アワー)