公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

中川真紀

【第1352回】中国が南シナ海で新たな埋め立て開始

中川真紀 / 2026.03.09 (月)


国基研研究員 中川真紀

 

 中国がベトナムと領有権を争う南シナ海・パラセル(西沙)諸島のアンテロープ礁で新たに埋め立てを開始したことが分かった。英国に拠点を置く非営利調査機関のオープン
ソース・センターが埋め立ての証拠となる衛星写真と共にリポートを公表した。
 アンテロープ礁の北東90キロにあるウッディ島は中国によって3000メートル級滑走路が建設され、既に軍事拠点化されていることから、同礁は今後、中国軍の防空・補給・情報収集等の予備基地として整備される可能性がある。

 ●10年ぶり、西沙諸島で本格工事
 オープンソース・センターは2月13日、アンテロープ礁で昨年12月から工事が開始され、今年2月時点で既に数平方キロが埋め立てられたようだと発表した。中国船籍のしゅんせつ船が確認され、国営企業である中国交通建設公司傘下の会社が工事をしている可能性が大きいと説明している。(https://stories.opensourcecentre.org/coral-to-concrete/)
 中国は2014年以降、ベトナムやフィリピン等と領有権争いをする南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島の七つの岩礁を埋め立てて人工島を建設し、艦艇、軍用機等を展開させて軍事拠点化を推進した。2015年6月に南沙諸島での埋め立ては終了が宣言され、それ以降インフラ整備は継続しているものの、大規模な埋め立ては確認されていなかった。今回は西沙諸島に場所を移し、南シナ海での10年ぶりの本格的な埋め立てとなる。

 ●ファイアリークロス礁にはサイバー部隊
 一方、南沙諸島の人工島では軍の活動が活発だ。2月10日、習近平中央軍委主席(国家主席)は恒例の春節前の部隊視察をリモートで行ったが、視察した九つの部隊の一つが南沙諸島のファイアリークロス礁のサイバー空間部隊であった。これまで関連の装備は確認されていたが、同部隊の南沙諸島配備が公式に報道されたのは初めてである。
 大佐である指揮官及び政治委員を含む17名が画面から確認できる。同指揮官が常駐しているとすれば、階級から他の人工島にも分隊が配備され、南沙全体では大隊級のサイバー空間部隊が常駐し、他国に対する監視・情報収集を行い、有事に備え、電子戦による妨害活動等の訓練を実施している可能性がある。
 また、有事の際に本土から南沙諸島へ増援部隊を派遣する訓練も実施している模様だ。昨年10月、南シナ海を担当する南部戦区の空軍車両部隊が本土の基地から民間船舶を使用し、3000キロ離れた任務地への移動を想定する訓練を行ったと報道された。移動距離からみて、任務地は南シナ海の人工島のようだ。有事の際、中国空軍は人工島に対潜戦や米軍の接近阻止のために作戦機を前方展開させる計画であり、その支援のための部隊を海上移動させる訓練を実施した可能性がある。(了)
 
 

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