国基研理事長 櫻井よしこ
野田内閣が女性宮家創設についての勉強会を発足させた。ご高齢の天皇・皇后両陛下のご負担軽減のためとして、女性宮家創設を推進する考えだと仄聞する。
だが、女性宮家創設は皇室と日本が直面する問題の解決にはつながらない。むしろ、皇統の継承を男系天皇から女系天皇に一大転換させる結果を招き、将来に禍根を残すことを憂うるものだ。
「女系天皇」への転換も
皇室の最大の危機であった皇位継承者問題は、悠仁さまご誕生によって当面解決された。皇位は今上陛下のあとを皇太子殿下、秋篠宮殿下、悠仁親王殿下のお三方が継承なさるため、今後数十年間は安定を得ているのである。
現在の危機は、成人された秋篠宮家の眞子さまはじめ女性皇族が結婚で皇籍を離脱されれば、悠仁さまを支える皇族がお一人もいなくなる可能性のあることだ。皇室の最重要のお務めである、年間少なくとも20回に上る重要な祭祀に加えて、現在、天皇・皇后両陛下をはじめ複数の皇族方が担っておられる公務を、悠仁さまがお一人で行い、また、2700年になんなんとする伝統を天皇ただお一人が担う、絶対孤独にも似た状況は、皇室の基盤をこの上なく脆弱にする。
従って、皇族方の数を増やすことには誰も反対しないだろう。だが、国民の支持を得やすいこの論法で女性宮家を創設するのは、折角当面の安定を得た男系男子による皇統の継承をも無にする結果を招く。
女性皇族が天皇のお血筋を引かない男性との結婚で授かるお子さまは男女を問わず女系である。その方がたまたま皇位を継承すれば、皇室の歴史は男系天皇から女系天皇へと百八十度転換されるからだ。
旧皇族を家族養子に
日本の長い歴史と深い文明に対する責任として、如何にして皇室の本質を維持しつつ、皇族方を増やせるか。昭和・平成の両天皇のお心から学ばなければならない局面である。
昭和天皇のお子様は、最初の四方は内親王でいらした。4人目の厚子さま誕生後の昭和6年3月26日、昭和天皇は元老西園寺公望に、皇室典範を改正して「養子の制度を認むる可否」をご下問なさった。一方、小泉純一郎首相の下で有識者会議が女系天皇容認に走っていた時、秋篠宮妃に親王誕生への努力を願われたのは今上天皇と美智子皇后でいらっしゃると推測される。
皇室の長い伝統を、叡智を結集して守り続けたいとのお気持ちを感ずるのは私だけではないだろう。であれば、解決策は女性宮家の創設ではなく、むしろ、男系男子のお血筋を現在に伝える旧皇族を、養子がとれないために絶家となった秩父宮家や高松宮家などに、家族養子の形で迎えることであろう。(了)
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第119回:女性宮家創設は禍根残す(櫻井よしこ)