国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一
自民党の石原伸晃幹事長が訪中を延期した。
父親である石原慎太郎東京都知事による尖閣諸島購入表明で、講演を予定してゐた上海の大学が受け入れに難色を示したからと伝へられる。伸晃氏は「頑固オヤジが暴れてゐるので、延期することになつた」(19日)と、父親のせゐで取り止めになつたと言はんばかりの口吻だが、慎太郎氏にぼやくのではなく、突然「来るな」と言つてきた大学側の非礼に対して怒つて見せるべきである。それが自民党幹事長の矜恃といふものだらう。
ネット調査で90%が賛成
都知事の購入表明後、日本のマスメディアの多くは、中国への配慮や都民の税金の使途といつた論点に議論を誘導しようとしてゐる。『朝日』は「日本人が上陸しただけで反発してくる中国のことだ。問題はいっそうこじれるだろう」(18日付、社説)と眉を顰め、『毎日』は「都が出るのは筋違い」(19日付、社説)と説諭する。
しかし、日本国の首都・東京都が国内の土地を取得することに何の問題もない。むしろ中国が騒ぎ立てるはうが筋違ひだし、ことさらに中国側の出方を気にし、過度に配慮してきたことが、これまで問題を拗らせてきたのである。
もつとも国民は、メディアの誘導に乗つてはゐないやうだ。ネット上のアンケート調査では90%の回答者が購入に賛成してゐる(YAHOO! JAPAN「みんなの政治」4月22日14時現在)。上田清司埼玉県知事が「意味が分からない」と発言したところ、30件以上の抗議が県に寄せられたといふ。
筆者が在住する神奈川県の黒岩祐治知事は「短兵急に突つ込むと紛争に発展しかねない。今すぐ(石原氏を)応援する気持にはなつてゐない」と、『朝日』論説委員のやうなことを言つてゐる。嗚呼、東京都民が羨ましい。筆者は神奈川県民として、黒岩氏のやうな知事を「応援する気にはなれない」。
都税使用は都民の誇り
都税による尖閣購入は、首都・東京都民の誇りである。他県民としては「ふるさと納税」制度(自分が貢献したいと思ふ自治体への寄付制度)を活用して、東京都に寄付することを検討したい。その分は所得税・住民税から控除されるので、石原都知事への「イエス」、そして野田佳彦首相や黒岩知事への「ノー」といふ意思表示になるわけである。
さて、「来るな」と言はれて訪中を延期した伸晃氏だが、堂々と上海に出掛け、閉ざされた大学の門の前に佇む姿を、内外のマスメディアに撮影させればよかつたのである。
50年前(昭和37年)に、指揮者・小澤征爾がNHK交響楽団からボイコットされるといふ事件があつた。このとき指揮台にポツンと佇む小澤の写真が報道されると、世間はN響を非難し小澤に同情した。疎外され孤立した若き指揮者の姿をアピールするといふ作戦を立てたのは、慎太郎氏たちだつた。息子なら、これくらゐの芸当をみせてほしいものである。(了)
【付言】拙論に関連し、東京都(知事本局)に対して「他県民としても、『ふるさと納税制度』を使つて、首都・東京による尖閣諸島購入事業にささやかながら貢献したいのだが、どうすればいいか」と問ひ合はせたところ、「口座開設について現在部内で検討中。開設が決まつたら、ホームページ等で広報する」とのことだつた。都には、早急に口座を開設してほしいと思ふ。
PDFファイルはこちら
第138回:尖閣買収を「ふるさと納税」で応援しよう(遠藤浩一)