公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

櫻井よしこ

【第148回】オスプレイ報道で目に余る沖縄紙の偏向

櫻井よしこ / 2012.07.02 (月)


国基研理事長 櫻井よしこ

沖縄の二大紙、琉球新報と沖縄タイムスは、全体像を伝える新聞の機能を果たさず、プロパガンダ紙になり果てている。年来、沖縄戦での軍の集団自決命令に関する報道に典型的に見られる両紙の偏向は目に余るが、米軍普天間飛行場に配備される垂直離着陸輸送機オスプレイに関しても同様だ。

誇張される危険性
日米両政府は8月には同機を普天間に配備する予定だ。西太平洋からインド洋、とりわけ南シナ海及び東シナ海に進出し、尖閣諸島を「核心的利益」 と明言する中国の野望は、日本とアジア諸国への最大の脅威だ。共通の脅威に対処すべく軍再編を進める米国は、向こう10年間で約39兆円もの軍事費を削減し、スリムだが機敏な軍事力の構築を目指す。その中でオスプレイ配備には大きな意味がある。

同機は現在配備中のCH46Eに比べて速度は約2倍で時速560キロ、戦闘半径は4倍強の600キロ、搭載重量も4倍近い。配備直前に2件の事故が発生したが、その事故率(10万飛行時間当たりの事故件数)は開発段階の事故を含めて3.32で、CH46の5.74より低い。2004年の運用開始以降、事故率は更に低下し、1.12である。現在、米海兵隊は世界で140機のオスプレイを展開中だ。

だが、琉球新報も沖縄タイムスも連日のようにオスプレイの危険を大きく取り上げ、強調する。例えば琉球新報は、6月17日に配備反対の「宜野湾市民大会」が開催されると号外を出し、翌日は「オスプレイ配備拒否、5200人決意固く」の大見出しと集会写真を一面と最終面をつなげるブチ抜きで掲載し、30ページの紙面のうち8ページを被害意識を強調する反対論で埋めた。

オスプレイ配備は「沖縄への差別」だとして憤る72歳の男性、「怖い飛行機が来るのを止めに行こうね」と6歳と4歳の娘に語りかける30代の母親から高校生まで、すべて情に訴える反対論だ。この点は沖縄タイムスも琉球新報と同様である。

求められる首相の決断力
二紙は中国の脅威、米軍再編の意味、同機配備による日米防衛力の向上、同機の安全性情報などは殆ど報じない。国家として中国にどう対処すべきかの発想もなく、日本国をひたすら恨みの対象と見る。

だが二大紙の偏向報道という宿痾しゅくあにも拘わらず、国防意識を有するまともなサイレント・ボイスも存在する。普天間飛行場の移転予定地・辺野古では、基地での雇用について地元民優先の政府対応を条件に、大半の人々が移転に賛成である。激しい反米軍、反本土の町だった石垣市にも、既に健全な保守系市長が誕生済みだ。野田佳彦首相も森本敏防衛相も、合理的な説明と決断力で沖縄のこの真っ当な声を後押しする政策を遂行すべきだ。(了)
 
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第148 回:オスプレイ報道で目に余る沖縄紙の偏向(櫻井よしこ)