内憂外患である。瘦軀の下級武士らが命懸けでわが国を守った明治維新時と比べても、現在のわが国の危機はなお深い。
●連携強化する中露朝とイラン
中露、イラン、北朝鮮はもはや連携強化を隠さない。中国はロシアを石油・ガスの購入で支え、中国製「民生用」ドローンがウクライナ上空を飛び交う。プーチン露大統領は10月18日、初めて台湾を中国の不可分の領土と表明、中国に付き従ってでも連携強化を進める。北朝鮮の金正恩総書記はウクライナ侵略戦争を「ロシアの正当な戦争」と言い、「絶対支持」を表明した。金氏は砲弾を、プーチン氏は軍事技術をそれぞれ差し出す形で相互扶助体制を敷いた。わが国を射程に入れた戦術核ミサイルを保有する北朝鮮は、米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルの精度をロシアの技術提供を受けてさらに高めるだろう。
イランは核製造に必要な高濃縮ウランを12日間で獲得できる水準に達したと国際原子力機関(IAEA)が発表したのは今年3月のことだ。
習近平国家主席は11月の米中首脳会談で、地球には2つの大国を受け入れる十分な広さがあると語った。中国の野望は西太平洋の支配から地球全体のそれへと拡大した。彼らの国際社会への攻勢は三つの重要な法整備によって新たな次元に入った。2021年6月の反外国制裁法、23年7月の改正反スパイ法及び対外関係法である。これによって中国の国内法の域外適用制度が整った。外国の国家、組織、個人に対して、中国の主権、安全、発展の利益を守るためにおよそ全ての案件を中国法で対処するというもので、21世紀の中華大帝国の基盤は岸田文雄首相の唱える核なき世界とも人間の尊厳重視の世界とも無縁である。
●岸田首相の大きな役割
日米欧と中露朝イの価値観の対立は長期にわたるだろう。この対立において私たちが優位を保ち、勝つために、日本も役割を果たす時だ。最大の脅威、中国に向き合う体制を米国と共につくれるか。文字どおりわが国のみならず西側世界の浮沈をかけた闘いである。欧州における北大西洋条約機構(NATO)、インド・太平洋における日本の役割分担に、日本国の存続を賭けて責任を持たなければならない。
安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の具体策実現に手を抜いてはならない。インド・太平洋にまたがる国際的枠組みである日米豪印のクアッド(Quad)や、環太平洋経済連携協定(TPP)こそ、日本発の戦略だ。政治資金不記載問題で弱り目に祟り目の岸田政権だが、活路を開くには一連の日本発の戦略が鍵になる。岸田首相は自ら一行一行読み込んで決断した安全保障3文書の精神を発揮するのがよい。自力で自国を守る決意の根本が憲法改正だと思い出すのがよい。そんな日本が米欧に引き起こす前向きな反応を以て、政治のエネルギーとせよ。(了)