2018年5月の記事一覧
【第516回】米の対中カウンターブローは進行中
国基研副理事長 田久保忠衛 米国屈指のシンクタンクである外交問題評議会のアジア研究部長、エリザベス・エコノミー女史がフォーリン・アフェアーズ誌5~6月号に「中国の新革命」と題し、説得力に富む文章を書いている。毛沢東の第一革命、鄧小平の第二革命に続く習近平国家主席の第三革命の特徴を「自由主義的な世界秩序の中で中国はリーダーシップを手にしようとしている非自由主義国家である」...
【第515回】日本の安保観に発想転換求める仏の知性
国基研理事・企画委員 石川弘修 国家基本問題研究所は5月17日、創立10周年を記念して「世界の近未来を予測する―日本は生き残れるのか?」と題するシンポジウムを開催した。ゲストスピーカーに招いたフランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、これまでにソ連崩壊、リーマン・ショック、アラブの春、ユーロ危機などを「予言」しているだけに、会場のイイノホール(東京・内幸町)には...
【第514回・特別版】リビア方式核廃絶に必須な情報機関
国基研企画委員 太田文雄 米政府は北朝鮮の核廃絶に「リビア方式」を適用したい考えのようだ。リビア方式とは、国際原子力機関(IAEA)のような国際機関の査察では時間がかかりすぎるので、どこに核・ミサイル施設があるのかを既に掌握している外国の情報機関に核関連機材・物資を速やかに国外へ撤去させる方式である。リビアの場合、米国の中央情報局(CIA)と英国の秘密情報部(MI6)、...
【第513回】日中関係改善に前のめりは禁物
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 安倍晋三首相は、日中韓サミットのため東京を先週訪れた李克強中国首相の北海道視察に同行し、帰国する空港で当初の予定になかった見送りを行うという下にも置かない対応ぶりを最後まで見せた。 4年前、北京の国際会議で安倍首相と仏頂面で握手した中国のトップ、習近平国家主席の非礼さが冷たい日中関係を象徴したことを思えば、両国関係の様変わりには目を見...
【第512回】拉致解決まで対北圧力緩めるな
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 4月30日から5月5日まで、北朝鮮による拉致被害者家族会、救う会、拉致議連が送った合同訪米団に、私も救う会副会長として参加した。 国際的な経済・軍事圧力の高まりで苦しくなった北朝鮮が、経済制裁の緩和を狙って微笑外交を仕掛け、韓国、中国などがそれを後押しする動きを見せ始めている。倫理感を欠くこれら勢力の動きにいかに対抗するか...
【第511回】欺瞞と裏切りの板門店宣言
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 「両首脳は、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8000万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した」。4月27日、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の独裁者金正恩委員長が発表したいわゆる板門店宣言の冒頭部分だ。私はこの宣言に強烈な違和感を覚えたのだが、その理由の第一がこの部分だった。 韓国を含む国際社会は、北朝鮮の...