2018年6月の記事一覧
【第524回・特別版】最善シナリオでも中国の属国出現―朝鮮半島非核化
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 私は6月12日の米朝首脳会談の結果を肯定的に見ている。共同声明でトランプは北朝鮮に「安全の保証」を与え、金正恩は「朝鮮半島の完全な非核化」を約束するという取引が成立したとみるからだ。私なりにこの取引を解説すれば、トランプは金正恩に対する斬首作戦(軍事攻撃)を、金正恩が完全な非核化を実行する間は控えるということだ。 金正恩は昨年1...
【第523回】「米国は矛、日本は盾」から脱却せよ
国基研企画委員 太田文雄 トランプ米大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習を「金がかかる」「挑発的」との理由で中止すると表明した。将来的には、在韓米軍の撤退を望んでいるとさえ言った。発表された米朝共同宣言は北朝鮮ではなく朝鮮半島の非核化をうたっており、韓国には核がないことから、米国が韓国に提供している拡大抑止(核抑止)が禁止対象になる可能性もある。 今回、...
【第522回】米大統領の「マネー・ファースト」に問題あり
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 6月12日にシンガポールで行われた史上初の米朝首脳会談は合意内容があいまいで、これが北朝鮮の核・ミサイル廃棄と北東アジア情勢の安定につながるかどうかは、まだ分からない。ポンペオ米国務長官と北朝鮮側による追加交渉を待たねばならない。しかし、首脳会談の評価とは別に違和感を覚えたのは、これまで北朝鮮の軍事行動を抑止してきた米韓合同軍事演習を「カネの...
【第521回・特別版】拉致問題、情報プロによる裏交渉を
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 米朝首脳会談により、北朝鮮による拉致被害者の救出問題は大きな進展を得た。トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩労働党委員長に拉致問題を提起したと会見で話した。安倍晋三首相は「この問題についての私の考えは、トランプ大統領から金正恩委員長に明確に伝えてもらった」と語っている。日本政府関係者は「トランプ氏は正恩氏に、日本に経済協力をしてもらいた...
【第520回・特別版】米朝の危うい政治ショー
国基研企画委員 湯浅博 確かに、米朝首脳会談を開催した6月12日は、歴史的な1日になった。劇場型の政治指導者2人が「朝鮮半島の完全非核化」へ向けて原則的に合意したからだ。トランプ米大統領は会談後の記者会見で、当初もくろんだ大量破壊兵器の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」が、共同声明に書き込まれていない点を指摘され、「時間がなかった」といら立ち気味に答えた。不完全であ...
【第519回】G7サミットの意義を思い起こせ
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 メルケル独首相は、イタリア・タオルミーナで昨年開催された前回の主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)における「トランプ米大統領対6カ国首脳」の議論について、「極めて不満とまでは言わないが、極めて困難だった」と評した。今回のシャルルボワ(カナダ)サミットでこの対立の構図はさらに鮮明となり、貿易問題の溝は埋まらず、いったん出され...
【第518回・特別版】逆回転を始めた「一帯一路」
国基研企画委員 湯浅博 中国が主導する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の野望が、ついに逆回転を始めた。構想に乗りかけていたマレーシアで、マハティール新政権がマレー半島高速鉄道計画の中止を表明したからだ。途上国によくある権力の腐敗、宗教の対立、経済の混乱は、拡張主義の中国が構想を押し付ける絶好の機会を提供する。ナジブ前政権下のマレーシアはまさに政府債務が国内総生産...
【第517回】独自の国際標準を創造する中国
国基研企画委員 太田文雄 週末にシンガポールで、各国の国防相や軍高官が参加するアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)が開催された。一昨年まで副総参謀長クラスを代表として送っていた中国は、昨年から軍シンクタンク副院長クラスの派遣にとどまっている。筆者も数年前に招待されて参加したことがあったが、本会議で中国は各国から袋叩きに会うので、政策決定に影響力のある代表を出さなく...