公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

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2022年5月の記事一覧

国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦    先週の日米首脳会談、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足、日米豪印(クアッド)首脳会議の開催という一連の動きは、国際経済秩序にとって大きな意義を有する。そこには変革への胎動を見いだすことができる。  ●重層的な経済安保の枠組み  第1に、国際経済秩序が掲げる旗印がこれまでの「貿易自由化」から「経済安全保障」へとシフトしつつ...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    バイデン米政権の戦略目標は、21世紀が独裁国家優位の時代になるのを防ぐことにある。ロシアのウクライナ侵略戦争によって、分裂気味だった北大西洋条約機構(NATO)が強化され、インド太平洋でも対中抑止を念頭におく日米豪印の4カ国戦略対話(クアッド)が大きな一歩を踏み出した。今後、中露枢軸を封じ込めるには、クアッドと欧州、アジアの有志国との連携...

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国基研企画委員・産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志    岸田文雄首相は23日のバイデン米大統領との首脳会談で、日本の防衛力を抜本的に強化し、防衛費の「相当な増額」(substantial increase)を確保する決意を伝え、共同声明にも盛り込まれた。これまで岸田首相は防衛費について「金額、結論ありきではなく、現実的な議論の結果として必要なものを(予算に)計上する」(1月2...

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国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦    来日中のバイデン米大統領は「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の発足を発表した。昨年10月に構想を明らかにして以来、関係国と協議を重ね、ようやく「中身の議論を開始する」スタートラインに立った。しかし、果たしてうたい文句である「新たな経済圏」の構築につながるのか。  ●日本がIPEFの橋渡し役  中国の環太平洋経済連携協定(T...

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国基研企画委員・産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志    来年日本で開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の開催地について、岸田文雄首相は広島市で開催する方向で調整に入っている。ロシアがウクライナを侵略し、核の恫どう喝も行っているなかで、核なき世界と平和の重要性を訴えるためにも被爆地広島での開催がふさわしいという。だが、ロシアや中国に対抗するためにも、G7が核を含む拡...

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国基研評議員兼企画委員 太田文雄    ウクライナ侵略後、ロシアが核兵器使用をほのめかして威嚇する中で、我が国においても核攻撃に対する不安から、米国との核共有や日本独自の核保有を検討すべきだとの議論が高まっている。そうした不安の一因はバイデン政権の政策にある。  まずウクライナがロシアに侵略された際の対応について、本来なら曖昧にしてロシアに侵略を躊躇ちゅうちょさせるべきところ、...

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国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦    先進7か国(G7)は5月8日のテレビ首脳会議でロシア産原油の原則禁輸に合意し、ロシアへの圧力を強めた。日本もG7の結束を重視せざるを得ないと判断した。経済制裁に「返り血」は付き物で、当然覚悟しなければならない。大事なことは、制裁を科す方と科される方のどちらのダメージが大きいかを冷静に見極めることだ。  ●厳しい選択だった原油禁輸...

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国基研副理事長 田久保忠衛    沖縄の祖国復帰50周年の記念行事があちこちで行われたが、沖縄の人たちの心からの喜びの気持ちはあまり伝わってこなかった。代表的なコメントは、両親が沖縄出身の作家、仲村清司氏が5月14日付の朝日新聞で述べた「沖縄が、日本という国の一つの県、地方になりかかっている。沖縄にとって明るいことが待っているのかは、わかりません」という談話だ。見出しは「ヤマト化...

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国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力    私は4月4日付本欄で、北朝鮮の実質的ナンバー2である金与正朝鮮労働党副部長らが非核保有国の韓国に核恫喝を加えたことについて、同じ非核保有国であるわが国にとっても見逃せない危機であり、核拡散防止条約からの脱退を検討すべきだと書いた。  残念ながら私の問題提起はほとんど波紋を呼ばなかった。恫喝した人物が北朝鮮の最高指導者ではな...

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国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博    岸田文雄首相が先の6カ国訪問の締めくくり会見で述べた「ウクライナは明日のアジア」との修辞は、現状変更勢力の中露に対抗する米欧との連帯を示す表明であった。ロシアにとって西の隣接国はウクライナだが、東の隣接国は日本であるという現実を考えれば、妥当な判断だ。しかも、目の前には地域覇権を目指す中国が、ロシアとの新しい枢軸を形成している。他方、岸田...

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国基研副理事長 田久保忠衛    国際情勢の変化は日本に憲法改正の必要を促している。ウクライナ戦争によって北大西洋条約機構(NATO)諸国はこぞって防衛面の強化に乗り出し、とりわけ軍事忌避の傾向が強かったドイツは国内総生産(GDP)の1.5%だった防衛費を一挙に2%以上へ引き上げることになった。日本の防衛努力強化の動きに敏感な米国の一部リベラル派に存在した「軍国主義復活」警戒論も...

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