【第901回】岸田首相はデフレの泥沼に日本を沈めるのか
国基研企画委員 田村秀男 新型コロナウイルス不況からの景気回復にウクライナ侵略の産油国ロシアへの経済制裁が重なって、エネルギー価格が高騰している。世界的にはインフレ局面だが、日本だけは違う。逆に物価が下がり、所得が減り続けるデフレ不況が深刻化している。にもかかわらず、岸田文雄政権は財務官僚の均衡財政主義に引きずられ、日銀審議委員人事では反金融緩和派を指名する始末である。 ...
【第900回】「真珠湾」の誤解は日本が解くしかない
国際政治学者 グレンコ・アンドリー 3月16日、ウクライナのゼレンスキー大統領は米議会向けにオンラインで演説した。米国に連帯を呼び掛け、ロシアから侵略を受けているウクライナの悲劇に無関心でいてはいけない、と主張した。全体的に素晴らしい演説だったが、一点だけ、日本人が看過できない問題があった。問題の部分は以下である。 「アメリカの皆様。あなた方の歴史で、今のウクライナ人の...
【第899回】なぜ「核」を議論しないのか
国基研評議員 岩田清文 平成18年10月15日、当時の中川昭一自民党政調会長がテレビ番組で「核議論を尽くすべきだ」と発言し、国内外で大きな反響を呼んだ。中川氏はその本意を後日、週刊誌においてこう述べている。「そもそも、私は核保有議論はしていません。核の議論をしましょうと言ったのです。もっと言えば、核の抑止力の議論を提言したいと言ったのです。それは、拉致も含めて日本の平和と安...
【第898回】日本はサハリン事業から撤退すべきでない
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米国がロシア産の石油、天然ガスの輸入禁止に踏み切った。ウクライナに侵攻したロシアの資金源を断つことは重要だとして、バイデン政権が米国世論、議会の要求に応えたものだ。日本としては、国際協調は重要であるものの、自国のエネルギーの安定供給を揺るがすならば簡単に同調できない。冷静に自国のエネルギー安全保障について判断することが必要だ。 一...
【第897回】親北勢力と戦う覚悟のない尹錫悦氏
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 9日の韓国大統領選挙は、野党の尹錫悦候補が得票率わずか0.7ポイント差で勝利を収めた。事前の世論調査では尹氏が5~10ポイント優勢だった。予想を覆す僅差は、韓国の国内分裂、政治的内戦の深刻さの表れだ。 私は2005年に『韓国分裂 親北左派vs韓米日同盟派の戦い』という本を書いて韓国内の分裂を指摘した。その私でも、過激な親...
【第896回】安全保障上の危機に鈍感な日本
国基研副理事長 田久保忠衛 トルーマン、アイゼンハワー、ケネディなど、戦後の米国の歴代大統領が民主主義、自由主義の大義名分を掲げ、颯爽さっそうと先頭を切って走った時代はどこへ去ってしまったか。 小国ウクライナが大国ロシアの大軍10万人以上によって侵略を受けているにもかかわらず、バイデン米大統領はウクライナ周辺の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に限定的な派兵をした以外に...
【第895回】米国の「アジア重視」見直しに備えよ
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 ロシアのプーチン大統領はウクライナ軍事侵攻で、冷戦後の欧州秩序を破壊するため武力行使をためらわないことを行動で示した。プーチン氏がロシアの独裁者にとどまる限り、米国は欧州の北大西洋条約機構(NATO)同盟国の安全保障に一層の力を注がざるを得ないだろう。少なくともバイデン政権の残り3年間、台頭する中国への対処を目的とする「アジア重視」政策は、修...
【第894回】「非核三原則」では国を守れない
国基研企画委員・産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志 核による恫どう喝を許してはならない。仮に恫喝されたとしても、国を守れる態勢をつくり上げるのが指導者の役割だが、残念ながら岸田文雄首相からはその気概が見えてこない。 岸田首相は3日の記者会見で、「(持たず、つくらず、持ち込ませずの)非核三原則を堅持することによって国民の命を守れるか」と聞かれると、「自らの防衛力と日米同...
【第893回】ロシアが狙うウクライナ原発の順次制圧と運転停止
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 3月4日未明、ロシア軍がウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の敷地内に侵入し、同原発を制圧した。ここはウクライナにある原子炉15基のうち6基を持ち、合計出力600万キロワット(kW)の欧州最大の原発だ。ウクライナでは電力の51%を原発が供給している。ロシアはウクライナの石油施設や天然ガスパイプラインも攻撃しており、国内のエネル...
【第892回】NYタイムズの佐渡金山偏向記事を批判する
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 佐渡金山の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産登録問題で、米紙ニューヨーク・タイムズがひどくバランスを欠く記事を掲載した。2月21日付で電子版に掲載した「日本は佐渡金山の歴史を一部だけを見せようとしている」と題する佐渡島発の記事だ。 タイトルから分かるように、日本が佐渡金山の朝鮮人戦時労働に関わる歴史を隠そうとし...