【第965回】対中経済安保に軸足を置いたG7
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 ドイツで先進7か国(G7)貿易相会合が開かれた。注目すべきは、中国を念頭に「経済的威圧」への深刻な懸念を初めて取り上げて、共同声明に盛り込んだことだ。 ●「経済的威圧」への共同対処 近年、中国は巨大な中国市場や供給力をバックに相手国の政策を変更するよう圧力をかけている。習近平国家主席は2020年4月の党の会議の講話において...
【第964回】数字合わせの防衛費で防衛力強化はできない
国基研企画委員・麗澤大学特別教授 織田邦男 今年5月の日米首脳会談で、岸田文雄首相は、日本の防衛力を抜本的に強化し、裏付けとなる防衛費を増額するとともに、「反撃能力」の保有を含めあらゆる選択肢を排除しない考えを伝え、バイデン米大統領から強い支持を得た。 6月、政府は経済財政運営の指針となる「骨太の方針」を決定し、防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内...
【第963回】北朝鮮の対露支援の内幕
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 米政府は、ウクライナ戦争で苦戦するロシアが北朝鮮から数百万発のロケット砲や迫撃砲の砲弾を輸入するための協議の過程にあると明らかにした。国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が9月6日の記者会見で述べた。すでに輸入されたかどうかは未確認としている。 また、ロシアは独立を宣言させたウクライナ東部のドネツク、ルガン...
【第962回】岸田政権は円安で日本を再生させる意志を示せ
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 円安がぶり返されるたびに「悪い円安」論が盛り上がる。それに押された鈴木俊一財務相は、円買い・ドル売りの市場介入を匂わせるのが関の山だ。岸田文雄政権に今求められるのは、円安を日本再生の好機にする強固な意志と戦略である。 ●企業の弱い設備投資・賃上げ意欲 9月8日時点の円の対ドル相場は143円台で、1月末に比べた下落率は2...
【第961回】IPEF交渉、「米国主導」のお寒い内実
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の交渉開始が正式に合意された。台頭する中国を念頭に、「米国をアジアに関与させる」という戦略的な意味は重要だ。 当初は参加に難色を示していたアジアの国々も、首脳レベルの戦略的判断で参加を決断した。ただし中国への対抗色が出ることを嫌い、声明ではそうした色彩を消している。 ●アジ...
【第960回】知性とモラルを欠いた日本の国会
国基研副理事長 田久保忠衛 衆参両院の議事運営委員会の閉会中審査に岸田文雄首相が出席し、立憲民主党の泉健太代表が質問をするというので、8日にテレビを視聴した。そこで感じた絶望的な怒りはいまだに収まらない。つい最近まで日本の最高指導者だった人物が公衆の面前で真っ昼間に暗殺されたのに、国の在り方は問題にもされず、取るに足らぬ瑣末な問題に貴重な時間が徒いたずらに費やされている。 ...
【第959回】IAEAは対ロシア制裁を発動せよ
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ロシア軍に占拠されたウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所が非常に危険な状態になっている。事態を深刻にとらえた国際原子力機関(IAEA)は、グロッシ事務局長が自ら現地に乗り込み、居座るロシア軍とザポリージャ原発の現状の調査に乗り出した。 ●メルトダウンの危険 ザポリージャ原発はロシアのウクライナ侵攻開始から間もない3...
【第958回】経済安保の有事法制を早急に作るべし
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 経済安全保障推進法が成立し、それを着実に実施することは当然だ。しかし、これで満足してはいけない。次に取り組むべきは経済安保における有事の法制度整備だ。経済安保推進法はいわば平時の法制だ。 ●日本版の国防生産法を 例えば、経済安保推進法には半導体など重要物資の安定的な供給を確保するための措置が規定されている。民間企業が国内生...
【第957回】日中首脳会談の「9.29」開催に反対する
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 9月29日は日中国交正常化50周年の記念日にあたる。50周年を祝って、日中首脳がオンラインなどで会談する可能性が取り沙汰されているが、この日の会談には反対する。いまはとても50周年を祝う時ではないからだ。 中国は8月4日、日本の排他的経済水域(EEZ)内に初めて弾道ミサイルを5発撃ち込んだ。日本側は強く抗議したが中国から謝罪...
【第956回】首相の原発政策転換を歓迎する
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 ロシアのウクライナ侵略に対する西側諸国の経済制裁とロシアの報復により、石油、天然ガスをはじめとするエネルギー価格が高騰する中で、電力需給は今冬へ向けて厳しい状況が続く。エネルギー資源を持たない我が国にとって、原子力発電所の最大限の活用は国家存続の唯一の選択肢である。岸田文雄首相が次世代型原発の開発・建設の検討を指示するなどエネルギ...