【第921回】新・経済枠組みはアジアに実利があるのか
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 来日中のバイデン米大統領は「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の発足を発表した。昨年10月に構想を明らかにして以来、関係国と協議を重ね、ようやく「中身の議論を開始する」スタートラインに立った。しかし、果たしてうたい文句である「新たな経済圏」の構築につながるのか。 ●日本がIPEFの橋渡し役 中国の環太平洋経済連携協定(T...
【第920回】「ヒロシマ・サミット」に反対する
国基研企画委員・産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志 来年日本で開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の開催地について、岸田文雄首相は広島市で開催する方向で調整に入っている。ロシアがウクライナを侵略し、核の恫どう喝も行っているなかで、核なき世界と平和の重要性を訴えるためにも被爆地広島での開催がふさわしいという。だが、ロシアや中国に対抗するためにも、G7が核を含む拡...
【第919回】日本の核不安の一因はバイデン政権にある
国基研評議員兼企画委員 太田文雄 ウクライナ侵略後、ロシアが核兵器使用をほのめかして威嚇する中で、我が国においても核攻撃に対する不安から、米国との核共有や日本独自の核保有を検討すべきだとの議論が高まっている。そうした不安の一因はバイデン政権の政策にある。 まずウクライナがロシアに侵略された際の対応について、本来なら曖昧にしてロシアに侵略を躊躇ちゅうちょさせるべきところ、...
【第918回】対ロ制裁にはエネルギー安保の視点が必要
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 先進7か国(G7)は5月8日のテレビ首脳会議でロシア産原油の原則禁輸に合意し、ロシアへの圧力を強めた。日本もG7の結束を重視せざるを得ないと判断した。経済制裁に「返り血」は付き物で、当然覚悟しなければならない。大事なことは、制裁を科す方と科される方のどちらのダメージが大きいかを冷静に見極めることだ。 ●厳しい選択だった原油禁輸...
【第917回】払拭できない沖縄の反ヤマト感情
国基研副理事長 田久保忠衛 沖縄の祖国復帰50周年の記念行事があちこちで行われたが、沖縄の人たちの心からの喜びの気持ちはあまり伝わってこなかった。代表的なコメントは、両親が沖縄出身の作家、仲村清司氏が5月14日付の朝日新聞で述べた「沖縄が、日本という国の一つの県、地方になりかかっている。沖縄にとって明るいことが待っているのかは、わかりません」という談話だ。見出しは「ヤマト化...
【第916回】再論・北朝鮮の核恫喝にどう立ち向かうのか
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 私は4月4日付本欄で、北朝鮮の実質的ナンバー2である金与正朝鮮労働党副部長らが非核保有国の韓国に核恫喝を加えたことについて、同じ非核保有国であるわが国にとっても見逃せない危機であり、核拡散防止条約からの脱退を検討すべきだと書いた。 残念ながら私の問題提起はほとんど波紋を呼ばなかった。恫喝した人物が北朝鮮の最高指導者ではな...
【第915回】防衛力強化を欠く制裁は危うい
国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博 岸田文雄首相が先の6カ国訪問の締めくくり会見で述べた「ウクライナは明日のアジア」との修辞は、現状変更勢力の中露に対抗する米欧との連帯を示す表明であった。ロシアにとって西の隣接国はウクライナだが、東の隣接国は日本であるという現実を考えれば、妥当な判断だ。しかも、目の前には地域覇権を目指す中国が、ロシアとの新しい枢軸を形成している。他方、岸田...
【第914回】憲法改正の好機が到来した
国基研副理事長 田久保忠衛 国際情勢の変化は日本に憲法改正の必要を促している。ウクライナ戦争によって北大西洋条約機構(NATO)諸国はこぞって防衛面の強化に乗り出し、とりわけ軍事忌避の傾向が強かったドイツは国内総生産(GDP)の1.5%だった防衛費を一挙に2%以上へ引き上げることになった。日本の防衛努力強化の動きに敏感な米国の一部リベラル派に存在した「軍国主義復活」警戒論も...
【第913回】日本はウクライナの悲劇に学べ
国基研理事長 櫻井よしこ ドイツのショルツ首相はロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵略戦争に敏感かつ果敢に反応した。核大国が核を脅しに使い、核拡散防止条約(NPT)体制が事実上崩壊した中で、ドイツも欧州も一変した。だが、わが国はロシアと中国、北朝鮮に囲まれ、世界で最も深刻な脅威に直面するというのに、周回遅れの対応を続けている。 ●専守防衛では国を守れない ...
【第912回】安全が保障されてこその国民生活ではないか
国基研評議員兼企画委員 太田文雄 財務省は4月20日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、自民党内で広がる防衛費増額論を「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」と牽制したと報じられている。 しかし、自衛官として国家の安全保障に任じてきた筆者としては逆に、国家の安全が保障されず今日のウクライナのような状況になれば、国民の生活や経済は...