【第725回・特別版】インド太平洋同盟への脱皮を期待する
国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博 インド太平洋の緩やかな日米豪印4カ国安全保障対話(クアッド)が、地域安全保障の新しい枠組みの構築へと動き出したことを歓迎する。米主導の国際秩序に挑戦する中国が周辺国への露骨な領域侵犯と懲罰外交を繰り返しているからだ。6日に東京で開催された日米豪印外相会議は、対話を定例化することで合意し、4カ国以外にも「クアッド・プラス」として協力を拡大す...
【第724回】学術会議こそ学問の自由を守れ
国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林直 日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人を菅政権が認めなかったことは学問の自由を侵害するとして、朝日新聞などで連日批判的に報道されている。しかし、安倍政権時代の2016年にも、首相官邸が会員候補に難色を示し、70歳定年の下で、3人の欠員が補充されなかった。2018年11月には、学術会議が推薦した人を任命する義務は政府に無いこ...
【第723回・特別版】チベットにおける「新疆化」の危機
東京大学法学部教授 平野聡 最近、東トルキスタン(中国の新疆ウイグル自治区)における強制収容所の問題や、南モンゴル(内モンゴル自治区)における学校教育華語化への抗議運動が注目を集めているが、これらの問題はチベット問題とつながっている。何故なら、これら3地域は歴史上独自の文化を築いていたにもかかわらず、近代以後「中国の一部分」とされ、「中国化」の対象とされているからである。 ...
【第722回】習主席の国賓来日は温存でなく中止に
産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志 菅義偉首相は9月25日夜、中国の習近平国家主席と就任後初めて電話会談を行い、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国公船による挑発行為について「懸念」を伝えた。習主席の国賓来日への言及はなかった。武漢ウイルスの感染状況、香港や新疆ウイグル、内モンゴル両自治区での人権問題を考えれば、国賓来日問題を取り上げるようなタイミングではな...
【第721回・特別版】菅政権は習主席を国賓で迎えてはならない
国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博 やるべきことが山積する菅義偉新首相が、逆にやるべきでないのは中国の習近平国家主席を国賓待遇で迎えることである。中国包囲網の影にいら立つ中国は、お人好しとおぼしき国家を突破口に、米国の同盟国を一つずつはがしにかかる。米欧関係にくさびを打ち込むことを試みるとともに、訪日圧力で日米同盟を弱体化させようとする。米国の中国封じ込めを失敗に終わらせる...
【第720回】菅首相に欠けている国家像
国基研副理事長 田久保忠衛 「国民のために働く」とか「スピード感をもって実行する」という新味のない言葉が流行はやり、菅氏グッズまで売り出されるなど、菅義偉首相の評判は滑り出し好調だが、率直に言って不安がある。自民党総裁選を戦った菅、石破茂、岸田文雄の3候補に共通するのは国家観の欠如だ。国際情勢の中で日本がいかなる位置にあるのかを正確に把握しない限り、国家観は生まれてこない。...
【第719回・特別版】中国は安全保障上の脅威
国基研評議員・元陸上幕僚長 岩田清文 「中華民族の偉大な復興」を掲げ覇権の拡大を続ける中国は、西太平洋において海空統合演習を繰り返し、将来的に米軍をこの地域から追い出そうとしている。中国が保有するとされる2000発近い中距離弾道・巡航ミサイルは、沖縄からグアムまでを射程に収め、対抗手段としては、米国の戦略核を主体とする核抑止力に頼る他ないのが現状である。加えて中国の最新の極...
【第718回】「反原発・親共産」の野党再編
国基研評議員長・尚美学園大学名誉教授 梅澤昇平 立憲民主党が国民民主党の大部分などと合流し、野党の大きな塊が生まれたが、旧「民主党」の焼き直しにすぎず、新鮮味に欠ける。新代表選びの討論会でも、国内に目を向けた議論ばかりで、厳しい国際情勢を睨んでの発言はなかった。同じことを同時期に行われた自民党総裁選の論議でも感じたが、日本の政治家の多くは世界の戦後体制に大変化が生じているこ...
【第717回・特別版】人道的危機下の南モンゴルに関与を
静岡大学教授 大野旭(楊海英) 南モンゴル(中国の内モンゴル自治区)は今、大きく揺れている。小学生から高校生までの児童・生徒、そしてその保護者とメディア関係者、大学教師、公務員など、モンゴル人は民族を挙げて中国政府の文化的ジェノサイド政策に反対の声を上げている。 ●中国が企む歴史と文化の抹殺 ことの発端は6月末に明るみに出た政策だ。今秋から逐次、モンゴルの民族学...
【第716回・特別版】「核持ち込み」をタブー視するな
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 中国が西太平洋の米軍事拠点グアムを中国本土から直接攻撃できる中距離弾道ミサイル(IRBM)DF(東風)26を急速に増強している。米国はこれに匹敵するミサイルを保有しておらず、西太平洋における米中ミサイル戦力の不均衡が拡大している。日本は中国の軍事的脅威に対抗する民主主義陣営の一員として、米国が開発する新しい中距離ミサイルの日本国内への配備受け...