【第748回】新型コロナ対策を抜本的に見直すべきだ
東京大学名誉教授 唐木英明 新型コロナウイルス対策には多くの問題がある。実は早い段階から、新型コロナの感染性と重症度はインフルエンザと大きく変わらないことが分かっていた。また、日本では欧米に比べて感染者と死者が極めて少なく、欧米のような厳重な対策は不要である。にもかかわらず、感染症法上「2類」相当という危険性が高い分類にしてしまった。 ●弊害を生んだ高リスク感染症扱...
【第747回・特別版】韓国の民主主義は死んでしまうのか
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 12月10日、韓国国会で高位公職者犯罪捜査処(公捜処)法の改正案が与党民主党の強行採決により成立した。公捜処は高位公職者だけを捜査対象にする大統領直属の捜査機関だ。野党「国民の力」党議員らは喪服を着て、韓国の民主主義が死んだと激しく抗議した。 改正のポイントは公捜処長候補の推薦にあたり野党の拒否権を廃止することだった。昨...
【第746回】米新国防長官は同盟強化に繋がるか?
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 ジョー・バイデン次期米大統領は、国防長官にロイド・オースティン退役陸軍大将を指名した。オースティン氏は中東地域を管轄する米中央軍司令官として過激組織「イスラム国」掃討作戦の指揮を取った経験を持つが、インド太平洋地域の軍事情勢について造詣が深いとはいえず、米国にとって中国が最大の脅威となった今日において、国防長官として最適任か疑問と言わざるを...
【第745回・特別版】中国の人権侵害を制裁する枠組みを作れ
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 香港の民主化運動リーダーが次々逮捕され、実刑判決を受けている。これに対して日本で批判の声が高まり、朝日新聞までもが12月3日社説で「国際社会は共同行動を強めるべきだ」と書いた。 それでは国際社会はどのような共同行動を取るべきなのか。都合が悪くなれば国際的な約束や評判など無視する独裁政権に人権侵害をやめさせるためには、それ...
【第744回・特別版】来年の通常国会こそ改憲の正念場だ
国基研理事・国士舘大学特任教授 百地章 臨時国会が12月5日閉幕し、憲法改正手続きを定めた国民投票法の改正は、最大の懸案事項の一つだったにもかかわらず、今回も先送りされてしまった。 ●国民投票法の改正もできない自民 衆議院では何とか憲法審査会を開会し、自由討議にまでこぎ付けたものの、結局、国民投票法の改正を行うことはできなかった。この改正法案は公職選挙法の改正に...
【第743回】冷静になってコロナ対応策を再考せよ
日本医科大学教授 松本尚 武漢ウイルス感染症による「annus horribilis」(ひどい年)もあと20日余りである。この間、メディアは不安を煽るような報道を続け、結果、国民はこの感染症をおぞましい疫病のように扱うようになった。そろそろ冷静に現状の対応策を再考すべきである。 集中治療室(ICU)の病床が逼迫ひっぱくしているといわれる。確かに重症患者が集中する一部の医...
【第742回・特別版】米国よ、TPP復帰へ目覚めよ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 中国の習近平国家主席が11月20日、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加意欲を表明した。地域包括的経済連携協定(RCEP)に署名した直後というタイミングをとらえて、バイデン次期米政権の機先を制し、自由貿易、多国間主義の旗手であるかの如く振る舞う。 政治的ポーズだけではない。習主席は他国にサプライチェーンの中国依存を高めさせて、経...
【第741回】「尖閣」で中国外相の暴言になぜ反論しない
産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人 有元隆志 中国の王毅外相訪日で鮮明になったことがある。一つ目は習近平国家主席を国賓として招くべきではないということ。二つ目は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛にかける政府・自民党の気迫の欠如だ。 ●習主席国賓来日は中止に 王外相の訪日は、延期となった習主席の国賓来日の環境整備が本来の目的だった。ところが、一連の発言によって真...
【第740回・特別版】RCEP署名で交錯した関係国の思惑
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日中韓、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する地域包括的経済連携協定(RCEP)が署名された。人口、国内総生産(GDP)ともに世界の3割を占める巨大経済圏ができた。世界の内向き志向の中で、貿易自由化の進展は評価できる。しかし過大評価は禁物だ。貿易自由化のレベルは環太平洋経済連携協定(TPP)に比べてかなり見劣りする。関...
【第739回】「自由で開かれた」抜きでインド太平洋を語るな
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 14日、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を終えた記者会見での菅義偉首相の発言が波紋を呼んでいる。これまでの「自由で開かれたインド太平洋」と言わずに、「平和で繁栄したインド太平洋」と言い換えたのだ。 ●価値観外交のキーワード 「平和と繁栄」に反対する者はいないだろう。問題はそれをどうやって達成するかだ。軍事力を背...