【第775回】米国は衰退するのか ― P・ケネディ氏と鼎談
国基研理事長 櫻井よしこ 国基研は3月9日、33年前の世界的ベストセラー『大国の興亡』の著者でイエール大学教授のポール・ケネディ氏をオンラインのゲストスピーカーに招き、「米国は衰退するのか」というテーマで鼎談した。 果たしてアメリカは衰退しているのか。衰退は今後も続くのか。衰退は相対的か、絶対的か―。わが国の安全保障は米国抜きに語れない。米国の力を土台にして中国共産党の...
【第774回】日本郵政・楽天の提携に潜む経済安保の落し穴
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 日本郵政と楽天は12日、資本・業務提携を発表して、衝撃が走った。日本郵政が楽天の第三者割当増資に応じ、1500億円を出資する。これにより日本郵政は楽天の株式の8.32%を握る。両社は物流、携帯電話事業、金融など幅広い分野で提携を強化する。ビジネス戦略としてみれば、提携のシナジー(相乗)効果を期待して評価もできよう。しかし、そこに潜む重...
【第773回】異様だった中国外相の記者会見
産経新聞台北支局長 矢板明夫 3月11日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、香港の選挙制度の見直しに関する決定案を採択したことが注目された。香港の民主派を議会から排除することは昨年来の既定方針であり、全人代を10年以上取材してきた筆者にとって、特に驚きはなかった。しかし、王毅・国務委員兼外相が記者会見で習近平国家主席に公然と忠誠心を誓う光景は異様に感じ...
【第772回】「クアッドの精神」で対中抑止を
国基研企画委員兼主任研究員 湯浅博 史上初の日米豪印4カ国(クアッド)首脳会議がオンラインで開催され、インド太平洋地域における民主主義国家の結束を印象付け、対中抑止への一歩を刻んだことは意義深い。自由世界の秩序に挑戦する中国は、米国不在で生じた空白を力で埋めようとしてきただけに、クアッドの結束や拡大を最も警戒してきた。4カ国は今後、外相会議のほか、年内に対面での首脳会議を開...
【第771回】公明党は国土保全強化に協力せよ
産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志 安全保障上重要な土地の買収対策として政府が検討している土地利用規制法案をめぐり、連立与党の公明党が慎重姿勢を強めている。国境離島、防衛施設、原子力発電所の周辺地域が外国資本によって買収され続けると、安全保障上重大な問題が発生する。公明党は同法整備をはじめ、国土保全と国防の強化に積極的に協力すべきだ。 ●予言した論文 中国系資...
【第770回】尖閣の緊張を高めているのは中国だ
国基研企画委員兼研究員 太田文雄 岸信夫防衛相は2月末、中国海警局の船が尖閣諸島周辺の日本領海侵入を繰り返していることを念頭に、外国公船の乗員が同諸島に上陸しようとする場合、自衛隊による「危害射撃」(相手に危害を加える射撃)が可能との見解を述べた。 我が国の法体系では、自衛隊の平時の海上警備行動と有事の際の防衛出動との間のいわゆるグレーゾーン事態における規定がないことか...
【第769回】米教授「慰安婦」論文への批判に問題あり
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 ハーバード大学のマーク・ラムザイヤー教授が書いた戦時中の慰安婦に関する学術論文「太平洋戦争における性サービスの契約」が批判されている。同論文はオランダの出版社エルゼビアが発行する国際学術誌インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクスのインターネット版で公開され、3月に出版される印刷版にも掲載が予定されていた...
【第768回】韓国国防白書の驚くべき「親中反日」
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 韓国は中国に引き寄せられ、大陸国家に回帰するのか。建国以来、韓国は自由民主国家として米国との軍事同盟で安全保障を強固にし、日本との友好関係を拡大しつつ、経済成長を遂げた。北朝鮮という存在が大陸との関係を遮断したため、海洋国家の一員となって発展したと言える。ところが、文在寅政権になって、韓国の立ち位置が変わった。 バイデ...
【第767回】「供給網の見直し」は日米協力の好機
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 バイデン米大統領は2月24日、重要部材の供給網の問題点と対応策を検証する大統領令に署名した。半導体、高性能電池、医薬品、レアアース(希土類)が重点4品目だ。バイデン氏は「米国の国益や価値観を共有しない外国に依存できない」と強調した。むろん中国を念頭に置いてのことだ。バイデン政権も前政権と同様に、中国に厳しく臨むのだろうか。 重点4...
【第766回】米のWHO復帰は台湾参加を条件にすべきだった
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 バイデン米政権が世界保健機構(WHO)への復帰を決めた。予想された動きだが、台湾のWHO総会参加などの条件を付けることなく簡単に復帰した姿勢には、強い危惧の念を抱かざるを得ない。 トランプ政権は昨年7月6日、中国に支配され、本来の責任を果たさず、改革の意思も見せないWHOとの関係に終止符を打つとして、1年後に脱退する旨...