【第761回】米国はミャンマー政策で失敗を重ねるな
インド政策研究センター教授 ブラーマ・チェラニー 独立を達成して以来、少数民族の反乱に悩まされてきた多民族国家ミャンマーで、唯一機能した国家機関が軍であった。しかし、10年前に軍部が段階的な民主化プロセスを開始した後も、欧米は軍部との関係構築に注力しなかった。欧米はアウン・サン・スー・チー氏だけに政治投資をし、スー・チー氏を事実上の聖人に祭り上げた後、イスラム教徒少数民族ロ...
【第760回】中国海警法に即時対応せよ
国基研理事・東海大学教授 山田吉彦 2月1日、中国は海警法を施行し、「中華民族の偉大なる復興」を実現するための実力行使に動き出した。この法律は、国連海洋法条約を基盤とした海洋秩序への挑戦であり、我が国をはじめとした近隣諸国への脅迫状である。中国共産党政権は、漢民族の生活空間を拡大するために他民族の住む土地を支配下に組み入れ、さらに海域まで侵攻しているのである。 海警法で...
【第759回】尖閣ではっきりした憲法の限界
国基研副理事長 田久保忠衛 尖閣諸島の実効支配へ向けた動きを半世紀にわたってジリジリと強化している中国と、それに口先だけで反対する日本政府との差が、ついにここまで来てしまったかと複雑な思いがする。日本の海上保安庁に当たる中国の海警局に「管轄海域」で違法行為を取り締まるための退去命令や武器使用の権限があることを明記した海警法が2月1日付で施行された。 中国が領有権を勝手に...
【第758回】空しく響いた「団結」の呼び掛け
国基研副理事長 田久保忠衛 バイデン米大統領の就任演説の全文を読んだが、あまりにも「民主主義」の説明と「団結」の必要性が繰り返されているので、正直に言って、いささかうんざりした。この二つのキーワードを強調すればするほど、トランプ前大統領に票を投じた7400万人の神経を逆なでし、非民主主義的行動を挑発し、対立を呼び戻さないだろうか。米国は南北戦争以来の深刻な対立を秘めながら前...
【第757回】北朝鮮党大会、金与正氏降格の背景
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 北朝鮮の平壌で1月5~12日に朝鮮労働党第8回大会が開かれた。大会では初日から3日間をかけて金正恩委員長が活動報告を行い、「国家核武力」を完成させたことを自身の業績として強調し、今後も核兵器を開発すると明言した。多弾頭核ミサイル、固体燃料の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発を続け、原子力...
【第756回】「自由で開かれたインド太平洋」の維持が重要
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 1月20日のバイデン米大統領就任を前に、次期政権でアジア政策を統括する「インド太平洋調整官」という幹部ポストがホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)に新設され、カート・キャンベル元国務次官補の起用が決まった。次期政権の上層部で数少ないアジア通として、キャンベル氏には、法の支配に基づく地域秩序の構築を目指す「自由で開かれたインド太平洋」戦略...
【第755回】自由世界の勝利へ日本は戦え
国基研理事長 櫻井よしこ 四海波高し。米中両大国の常軌を逸した振る舞いで幕を開けた今年、国際社会の直面する危機は尋常ではない。危機の本質は、世界が膨張する中国に飲み込まれることだ。 その中で日本がどのように自由陣営に貢献できるかを問うときだ。私たちはかつて列強の脅威に耐え抜いた。今回、中国共産党の脅威をかわし、世界に日本の道を示せるか。現在の危機は黒船来航から始まった1...
【第754回】韓国の不当判決に事実に基づき反論せよ
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 また韓国の裁判所がひどい判決を下した。1月8日、ソウル地裁は日本国に対して、元慰安婦12人に、1人あたり1億ウォン(約950万円)の慰謝料を払えと命じた。 国際法には、国家は他国の裁判の被告にならないという「主権免除」の原則がある。国家が互いの主権を尊重する外交関係の基本だ。ところがソウル地裁は、慰安婦制度を「主権免除」...
【第753回】ワクチン開発に貢献した米軍事研究機関
防衛省防衛研究所 社会・経済研究室長 塚本勝也 米国では新型コロナウイルスの感染拡大から1年足らずのうちにワクチンが開発され、接種が開始されている。この前例のない急ピッチのワクチン開発で存在感を高めたのが、米国防総省の研究機関である国防高等研究計画局(DARPA)であった。 DARPAは、人工衛星の打ち上げでソ連に先を越された1957年の「スプートニク・ショック」の翌年...
【第752回・特別版】夫婦別姓の議論は家族の形が問われている
国基研企画委員・日本大学文理学部非常勤講師 工藤豪 今月25日に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画において、一つの焦点となっていたのが「選択的夫婦別姓」に関する議論である。最終的には、「家族形態の変化及び生活様式の多様化、国民意識の動向等も考慮し、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、子供への影...