【第825回】「河野太郎首相」でいいのか
産経新聞月刊正論発行人 有元隆志 菅義偉首相の退陣表明に伴う自民党総裁選に河野太郎行政改革担当相が出馬の意向を示している。河野氏は世論調査でも「ポスト菅」の上位に位置し、有力視されている。自民党は国会で多数を占め、次期総裁は直ちに首相に就任する。人気は高い河野氏だが、以下の理由から首相にふさわしくないと指摘したい。 ●女系天皇を容認 河野氏は1月からワクチン担当...
【第824回】アフガン退避作戦難航の根源に戦後体制
国基研副理事長 田久保忠衛 外務省も防衛省も頭が痛いだろう。アフガニスタンからの邦人等退避措置をめぐって、日本大使館員は現地の邦人を置き去りにして逃げた、自衛隊派遣が遅かった、救出できた邦人は1人だけだったなど、マスメディアからさんざんたたかれ、これから野党の追及も始まるだろう。が、見当外れの政府批判は御免被りたい。問題の根源は深いところにあるのだ。 ●空白の10日...
【第823回】自民総裁候補は「国家観」を語れ
産経新聞月刊正論発行人 有元隆志 9月17日告示、29日投開票の日程が決まった自民党総裁選で、候補者たちに問いたいことがある。それは日本を取り巻く現状をどのように分析し、日本をいかなる方向に導いていこうとしているのかということだ。 野党第一党の立憲民主党は日本を壊滅の危機に陥れた旧民主党政権の残党が中心メンバーであり、政権担当能力はない。次期自民党総裁には日本の首相とし...
【第822回】アフガンの鉱物資源を狙う中国
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 アフガニスタンの地下には、膨大な量の鉱物資源が眠っている。バイデン米政権がアフガニスタンから米軍の拙速な撤退を行い、タリバンの実権掌握を許したことで、この鉱物資源が中国の手に転がり込む恐れが出てきた。 ●レアアースも確認 アフガニスタンの鉱物資源の調査は、米地質調査所(USGS)のジャック・メドリン氏のチームによって2...
【第821回】アフガン「敗北」を日本自立の契機に
産経新聞月刊正論発行人 有元隆志 イスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンで20年ぶりに実権を掌握した。米国に歩調を合わせて、これまで総額約7000億円をつぎ込み、アフガニスタンの「自立」を支援してきた日本にとっても、今回の事態は「敗北」と言ってもいい。 筆者は2001年9月11日、米ニューヨークのダウンタウンに住んでいた。世界貿易センタービルに2機目の飛行機が突入...
【第820回】タリバン勝利で米中対立構図に変化も
国基研副理事長 田久保忠衛 要するに、軍事力では世界最強の米軍が、イスラム原理主義勢力の一つに過ぎないタリバンに、20年間戦って敗北を喫したということだ。タリバンはスポークスマンの会見で、国際社会に柔軟に対応していくかのような姿勢を取っているが、かつて偶像破壊と称してアフガニスタン中部バーミヤンの石仏を破壊する暴挙を働いたタリバンが急に穏健路線に転ずるとは考えにくい。あると...
【第819回】日米軍艦の台湾海峡共同通航を提唱する
国防安全研究院(台湾)准研究員 林彦宏 中国の軍事活動拡大により、台湾海峡の緊張が高まっている。台湾国防省の発表によると、中国人民解放軍の軍用機が台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に侵入した回数は、2021年1月1日~8月8日に計125日、367機に達した。台湾空軍は、戦闘機を常時上空待機させる「空中哨戒」で対応しているほか、地上から無線警告を発し、地対空ミサイルのレーダーシ...
【第818回】日本は「戦後の霧」を払え
麗澤大学准教授 ジェイソン・モーガン 戦場での超現実的な経験を説明するのに、「戦争の霧」という言葉が復員軍人によってしばしば使われる。戦闘を体験した人は、周囲の状況からの断絶感、方向感覚の消失、周りの出来事や時間の経過についての認識の喪失について語る。 戦勝国の米国にとって、第2次世界大戦の「戦争の霧」はずっと前に晴れた。一方、敗戦国の日本は長く「戦後の霧」に包まれてき...
【第817回】政府はコロナ対策を根本的に転換せよ
日本医科大学特任教授 松本尚 武漢ウィルスの感染者数が再び急増している。その原因を東京五輪の開催と結びつける論調もあるが、無観客と「バブル方式」(選手など五輪関係者と外部との接触遮断)を考えれば、そういった批判に明確な根拠があるとは思えない。周知の通り、ワクチン接種により高齢者の死亡者、重症者の数は激減しており、7月29日の東京都のデータでは新規感染者の83%は40歳代以下...
【第816回】日本は共に戦う同盟国であれ
国基研客員研究員・米バンダービルト大学名誉教授 ジェームズ・E・アワー 私は1963年から88年まで25年間、海軍将校および文民として米国防総省で働いた。たまたま私の公務員生活は、冷戦の最後の25年間とほぼ重なった。とりわけ75年から85年まで私が非常に強く懸念したのは、ソ連が保有する大量の通常兵器と戦略核兵器だった。しかし、米国を中心とする民主主義同盟諸国に脅威を及ぼした...