【第865回】対中非難決議見送りで「人権重視」と言えるのか
国基研企画委員・産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志 中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を非難する国会決議の採択がまたもや見送られることになった。岸田文雄首相、自民党の茂木敏充幹事長が中国の反発、連立与党・公明党内の慎重論に忖度そんたくした結果だ。岸田首相は9日、米政府主催の「民主主義サミット」で中国による人権弾圧を念頭に深刻な人権状況に声を上げる姿勢を打ち出...
【第864回】家族会前代表・飯塚繁雄さん逝去に思う
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 12月18日、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)前代表の飯塚繁雄さんが亡くなった。83歳だった。飯塚さんは拉致被害者田口八重子さんの長兄だ。初代家族会代表の横田滋さんの後を継いで2008年から14年間、家族会代表を勤めた。横田さんの代表在任期間は10年8カ月だったから、それよりも長い年月、拉致被害者を取り戻すための国...
【第863回】北京五輪対応で同志国と連携せよ
国基研理事長 櫻井よしこ 「ウイグル、チベット、モンゴル民族、香港など、人権等を巡る諸問題について、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めます」(自民党総裁としての公約)、「私の内閣では、人権をはじめとして普遍的価値を守り抜く」(12月13日、衆院予算委員会)、「深刻な人権状況にしっかり声を上げていきます」(民主主義サミット)。 いずれも岸田文雄首相が内外に向けて発...
【第862回】日本は「輸出管理・人権イニシアチブ」を支持せよ
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 バイデン米大統領主催の「民主主義サミット」が9、10の両日、オンラインで開催された。約110か国・地域の首脳らを招待しての異例の規模だが、招待国の選定には戦略的観点から疑問も投げかけられた。それはともかくとして、成果として「輸出管理・人権イニシアチブ」という新たな枠組みを発足させたことは注目すべきだ。問題は、その発足に関する重要な共同...
【第861回】住民投票に名を借りた外国人参政権条例
国基研理事・国士舘大学特任教授 百地章 現在、東京都武蔵野市で外国人にも住民投票権を認めた住民投票条例が制定されようとしている。これは住民投票に名を借りた外国人参政権条例であり、憲法違反と思われる。 ●参政権は「国民固有の権利」 武蔵野市では、立憲民主党や共産党などの支持を得て再選された松下玲子市長の主導のもと、市民不在の中で作成された住民投票条例案が議会に提出...
【第860回】米で「慰安婦≠性奴隷」論文を削除
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 米国に拠点を置く国際問題専門ネット雑誌が、戦時中の慰安婦は性奴隷でなかったと主張する韓国人学者の論文をいったん掲載しながら、すぐに削除して謝罪し、性奴隷説に立つ別の学者の論文を掲載した。米ハーバード大学のラムザイヤー教授が学術誌の論文撤回を要求された出来事に続いて、慰安婦に関する今年2度目の学問の自由の侵害事件だ。 ...
【第859回】戦略思考と縁遠い民主主義サミット
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 バイデン米大統領が12月初めに主宰する「民主主義サミット」の招待国が発表された。台湾が入っている一方で、米中両国が影響力拡大でしのぎを削る東南アジアをはじめ、中東、アフリカ、中央アジアなどの多くの国が招かれていない。中国やロシアの専制主義に反対する国々を結集するという戦略的思考とは縁遠い会議のようである。 ●排除対象に同盟・友好国も ...
【第858回】全斗煥元大統領逝去に思う
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 韓国の全斗煥元大統領が亡くなった。90歳だった。文在寅政権は、大統領経験者は国家葬の対象となるという法令上の規定を無視して、国家葬をせず、家族葬に対する国としての支援もしなかった。 全氏は晩年、経済的困難を抱え、病院の治療費も友人らの支援を受けていたので、葬儀費用は全政権の元閣僚や秘書官らの会が負担したという。 文大...
【第857回】林外相の「お友達外交」を危ぶむ
国基研企画委員兼産経新聞月刊正論発行人 有元隆志 林芳正外相は就任時に辞任した日中友好議員連盟会長の意識が抜けないのか。中国の王毅外相から訪中招請を受けたことを自ら明かした。来年2月の北京冬季五輪開会式出席に対する外交的ボイコットが、国際社会で焦点となっている最中にもかかわらずだ。 11月18日の外相電話会談後には日中双方とも発表しなかったが、林氏は21日のフジテレビ番...
【第856回】米ミサイルの日本配備へ活発な議論を期待する
国基研評議員兼企画委員 太田文雄 17日に米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の年次報告書が公表された。その中で、日本にとって極めて重要な記述の一つは「パートナー国が米国の中距離戦力の受け入れに乗り気であることを調べるための対話」を提唱しているくだりである。台湾の安全確保のため、米軍がインド太平洋に数多くの対艦巡航ミサイルと対艦弾道ミサイルを展開するための予算を付...