【第791回】原子力活用へ政治家は真の世論に耳を傾けよ
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 菅義偉首相は、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する目標を発表した。その達成には、常識的に考えて、既存原発の活用はもちろんのこと、原発の新増設やリプレース(建て替え)が不可欠である。ところが、政府のエネルギー基本計画の柱となる2030年度の電源構成の見直しでは、原子力は現行目標の据え置きで調整が進...
【第790回】中国に抗議できない国会議員はいらない
国基研理事長 櫻井よしこ 世界のどの国よりもわが国日本は人権尊重や民主主義擁護に努めなければならない。 第一の理由は、604年に聖徳太子が定めた十七条の憲法以来、明治天皇の五箇条の御誓文まで、その語彙を用いたわけではなかったが、人権尊重も民主主義もわが国の国柄の核を成す価値観であるからだ。 第二の理由は、わが国は戦後憲法で「戦力」の保持を禁止し、自衛隊は基本的に警察...
【第789回】国会は憲法本体の議論に入れ
産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志 憲法改正の手続きに関する国民投票法改正案が6日の衆院憲法審査会で可決された。自民、立憲民主両党は6月16日までの通常国会会期中に成立させることで合意した。これにより改憲に向けた機運が高まることを期待する。 国民投票法は憲法改正の具体的な中身ではなく、手続きを定めているにすぎない。にもかかわらず2018年6月の改正案提出以来、8国会、...
【第788回】閣議決定「『従軍慰安婦』使わない」を評価する
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 4月27日、菅内閣が慰安婦問題と朝鮮人戦時労働者問題で重要な閣議決定を行った。「従軍慰安婦」という用語はたとえ「いわゆる」が付いても不適切であり、また朝鮮人戦時労働者について「強制連行」や「強制労働」という用語も不適切だと決定したのだ。 ●「いわゆる」も排除 昨年、文部科学省の検定に合格した山川出版の中学歴史教科...
【第787回】温室効果ガス46%削減目標に思う
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 菅義偉首相は4月22日の気候変動サミットのオンライン出席を前に、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減する目標を表明した。一方、米国は18日、米中高官級協議を経て、米中両国が国際的な地球温暖化対策に加わり、気候変動パリ協定の目標達成に取り組む共同声明を発表した。中国を温暖化対策の仲間に引き入れ、世界最大の温室...
【第786回】テンセント問題が迫る楽天と政府の対応
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 楽天に対する中国IT大手テンセントの子会社からの出資について、3月の発表直後から2度にわたって本欄で経済安全保障にかかわる懸念を指摘してきた。そうした懸念の声を意識してか、楽天はこの件の説明を大きく変えて、懸念払しょくに躍起になっている。政府も対応を迫られ、最近になって「監視」していく方針が報道されている。しかし、これで懸念が解消され...
【第785回】米に軍事貢献の約束、問われる日本の実行
国基研副理事長・杏林大学名誉教授 田久保忠衛 日米首脳会談についての各紙論調は出尽くした感があるが、一言でその意義を表現すると、米国の対中政策の中で日本がより重要な役目を果たす約束をバイデン政権は取り付けたことにある。日本政府は「約束」だけでなく、「実行」の段階に移行する。志ある政治家なら、この機会をとらえて日本を一人前の国家にする絶好の機会とすべきではないか。 共同声...
【第784回】野党圧勝でも遠い韓国政治の正常化
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 4月7日、韓国でソウル市長と釜山市長の補欠選挙があった。セクハラが問題になり、釜山市長は辞任、ソウル市長は自殺したことを受けて、残余の任期1年を勤める新市長を選ぶ選挙だった。 ソウルでは第1野党「国民の力」の呉世勲候補(元ソウル市長)が得票率58%、与党「共に民主党」の朴映宣候補(前中小ベンチャー企業相)が39%だった。...
【第783回】スジの通った海洋安保政策を実施せよ
国基研理事・東海大学教授 山田吉彦 3月初旬、フィリピンが管轄権を主張する南シナ海のウィットサン礁海域に出没した220隻の中国漁船は、1か月経っても一部が停泊を続け、この海域の実効支配を既成事実化している。フィリピンは主権を維持するため米国に支援を求めるなど奔走している。しかし、経済支援やワクチン外交を駆使して譲歩を迫る中国に、具体的な反撃ができないのが現実だ。 中国は...
【第782回】原発処理水海洋放出を評価する
産経新聞月刊「正論」発行人 有元隆志 東京電力福島第1原子力発電所の敷地内にたまる放射性物質トリチウムを含んだ処理水について、政府が海洋放出する方針を固めたことは、遅れたとはいえ「政治の決断」として評価できる。今後は風評被害が拡大しないよう、国内外への発信も含め、菅義偉首相を中心に責任を持って取り組まなければならない。 日本や韓国などのメディアの一部が「汚染水」と書くの...