【第396回】大国のパワーゲームと安倍外交
国基研研究員兼企画委員 冨山泰 オバマ政権の任期が残り4カ月余りとなり、米国が国際社会でリーダーシップを発揮できない状況があちこちで生まれている。オバマ政権の2期目に顕著になった米国の「内向き」傾向は次期政権に受け継がれる可能性があり、日本の外交・安全保障政策は米国の支援を当然のこととして期待できなくなるかもしれない。 ●絶望的なTPP承認 オバマ政権の内政・外...
【第395回】北の弾道ミサイルは固体燃料使用か
国基研企画委員 太田文雄 8月24日に北朝鮮が潜水艦から発射した弾道ミサイルの映像を見ると、白い粉末状の噴煙を出していることから、固体燃料を使用しているのではないかと思った。知人の米国人専門家も「固体燃料と思われる」と同意したため、確信するに至った。固体燃料の使用は、北朝鮮の弾道ミサイル開発が新段階に入ったことを物語る。 ●即応性に優れる固体燃料 現在、北朝鮮...
【第394回】バイデン発言と日本国憲法
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 8月15日、バイデン米副大統領がトランプ共和党大統領候補を揶揄やゆして、「核兵器を持てない日本の憲法を我々が書いたことを彼は理解していないのか」と発言したことが、日本で話題となった。 例えば、岡田克也民進党代表は「(日本の)国会でも議論して(現憲法を)作った。米国が書いたというのは、副大統領としてはかなり不適切な発言だ」と述べ...
【第393回】日本の改憲がアジアの安定を導く
インド政策研究センター教授 ブラーマ・チェラニー アジアの平和のためには積極的な日本が必要だ。日本の今日的な課題は、平和至上主義を保持すべきかどうかではなく、地域問題や国際問題に対し、悠長で、受け身のままでいられるかどうかである。日本は、アジアの力の均衡を保つために相応の軍事力を持ち、インド・太平洋地域の友好国と連携することで、平和への積極的貢献者になるであろう。 ...
【第392回】防衛白書に感じた物足りなさ
国基研企画委員 太田文雄 今年の防衛白書を読んで、かつて昭和62年(1987年)に白書の第1部「世界の軍事情勢」の執筆を担当した者として所見を述べたい。今回の白書では、中国の軍事力の具体的な増勢予測について記述がなく、単に「今後の動向が注目される」といった表現が多く目についた。また、今日的なトピックに関しては、読者に分かりやすいように、軍事技術的な比較が必要ではなかろうか。...
【第391回・特別版】疑問だらけの「慰安婦」登録申請資料
国基研理事・明星大学特別教授 髙橋史朗 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」(記憶遺産)に旧日本軍の慰安婦に関する資料の登録を申請した共同申請書の抜粋がウェブサイトで8月3日に公開された。申請主体になったのは8カ国・地域の14の市民団体で構成される国際連帯委員会と、英国の帝国戦争博物館である。 ●「世界の記憶」申請主体は日本の団体 申請された資料は274...
【第390回】 元慰安婦の8割が日韓合意を支持
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 昨年末の日韓合意に基づき、韓国政府は7月28日、元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を発足させた。発足式では合意反対派の運動家が抗議行動に出て、理事長に就任した金兌玄・誠信女子大名誉教授に唐辛子成分を浴びせる騒動を起こした。 挺身隊問題対策協議会(挺対協)をはじめとする合意反対派は「当事者の意思を排除した財団発足に反対」との...
【第389回】「自由世界のリーダー」はどこへ
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 「アメリカを再び偉大にしよう」を最初に米大統領選挙のスローガンに用いたのは、1980年の共和党候補ロナルド・レーガン氏であった。リベラル派はレーガン氏を単細胞で危険な人物と批判したが、今では「自由世界のリーダー」にふさわしい理念と意志を持った政治家との評価が固まった観がある。 しかし、同じスローガンを唱えるドナルド・トランプ氏...
【第388回】必要な南シナ海監視の国際的枠組み
国基研事務局長 黒澤聖二 南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の裁定を受けて、ウランバートルで開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会合は「国際法や国連海洋法条約の諸原則に基づく紛争解決」をうたう議長声明を採択、名指しは避けながらも、裁定の尊重を中国に促した。しかし、いくら正論であっても中国は聞く耳を持たない。一方、裁定を詳細に見れば、海洋国家日本が手放しで喜べな...
【第387回・特別版】公平中立だった南シナ海仲裁裁判
国基研事務局長 黒澤聖二 フィリピンが中国との間で争う南シナ海の紛争に関する仲裁裁判の裁定が出た。7月12日の裁定は、中国が主張する「9段線」内部の歴史的権利を否定するなど、フィリピンの言い分をほぼ全面的に認めた。中国は予想通り裁定を「断固拒否」(外務省)したが、仲裁裁判所は中国に反論の機会を与えた上、ベトナムやマレーシアの主張も考慮するなど、公平中立に徹したと評価できる。...