【第357回・特別版】国際情報戦で遅れをとるな
国基研企画委員 太田文雄 1月下旬、米国各地で「中国の海洋拡張」を発表テーマとして講演旅行をしてきた。日本政府の国際情報発信が不十分であり、海外にいる日本人はそれを不満に思っていることを痛感した。 ●誹謗中傷に直ちに反論を ペンシルベニア大学では、約30名の聴衆に対して発表を約20分間行い、質疑応答に入った。聴衆の中にフィラデルフィア在住の日本人技術者がおり...
【第356回・特別版】次の航行の自由作戦はミスチーフ礁で
国基研研究員兼企画委員 冨山泰 米国は1月30日、南シナ海で中国が支配する島や岩から12カイリ以内を軍艦が通過する「航行の自由」作戦を3カ月ぶりに実施した。昨年10月の前回作戦がスプラトリー(南沙)諸島で中国が建設した人工島の近くで行われたのに対し、今回は埋め立てとは無関係のパラセル(西沙)諸島の海域で実施された。中国による航行の自由の侵害を許さないとの意思表示は2回の作戦...
【第355回】 北朝鮮の核ミサイル戦略を見誤るな
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 2月7日、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を行った。1月6日の核実験に対する我が国の独自制裁や国連安保理の制裁が発動する前に、これ見よがしに行った金正恩政権の挑発だ。発射中止を求めていた中国政府の面子は丸つぶれだ。 我が国の多くの専門家は、核実験とミサイル実験の動機について、米国と直接交渉し、金正恩独裁体制を守るため、などと解説し...
【第354回・特別版】東シナ海の隙を突く中国
国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博 世界の目が中国による南シナ海の「独り占め」戦術に注がれている隙に、東シナ海の尖閣諸島周辺で中国公船がプレゼンスを高めている。中国人民解放軍が採用する孫子の兵法「虚実篇」は、相手の目をくらまして戦うことを旨とするから、日本は油断なく備えを固めるべきである。2014年以降、安倍晋三首相と習近平国家主席が首脳会談を重ね、日中関係が好転しつ...
【第353回】高速増殖炉こそ日本が取るべき道
東京大学大学院教授 岡本孝司 発電と同時に燃料を生産する高速増殖炉は、冷却材に危険なナトリウムを使うため、ナトリウムに対する経験の蓄積と専門的な知識が必要である。一方、ナトリウムを使い、水を使わないため、福島の原子力発電所事故の様に全電源が無くなっても、物理現象である自然対流で勝手に冷えて安全が保たれる。ある意味、原子力システムとしては、福島原発の様な軽水炉よりも安全性が高...
【第352回】フィリピン最高裁判決を受け法治国家は連帯せよ
国基研事務局長 黒澤聖二 1月12日、フィリピン最高裁判所は米比防衛協力強化協定(EDCA)が合憲であるとの判断を示した。同協定は2014年に結ばれたものだが、フィリピンの元上院議員らが上院の承認を得ない条約は憲法違反であるとして政府を訴え、発効手続きが停止していた。 ●司法判断が政府を後押し 判決の中で言及されているフィリピン共和国憲法第18条第25項は「議会...
【第351回・特別版】政治主導で亡命チベット人援助を
国基研理事兼企画委員 石川弘修 チベット亡命政府のロブサン・センゲ首相(47)が1月8日から13日まで日本を訪問、国家基本問題研究所役員をはじめ、国会議員、大学関係者、曹洞宗など仏教関係者らと会い、意見交換や講演を行った。センゲ首相が政治指導者に選出されて初訪日した4年前に比べ、メディアの扱いは小さかったが、千葉工業大学(千葉県習志野市)が亡命チベット人留学生5人の受け入れ...
【第350回・特別版】出てきた「日米台」対中国の構図
国基研副理事長 田久保忠衛 1月12日から台湾を訪問して17日夜に帰国し、日本の報道ぶりを一覧したが、朝日新聞の台北支局長が一面に書いていた「高まる台湾人意識」と題する豆解説は光っていた。民進党の蔡英文主席が16日の総統選挙に勝って、詰めかけた夥(おびただ)しい人々を前に演説をした場面を目にした者でなければ分からない。蔡主席は「ナショナル・アイデンティティー」という言葉...
【第349回・特別版】 歴史は繰り返す、今こそ構造改革を
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 政府はアベノミクスが「第2ステージ」に入ったと表明したが、従来のアベノミクスとの関係は不明なままで、その内容も具体策も曖昧である。第2ステージの目標の一つである「名目GDP(国内総生産)600兆円」は、既に発表されている「中長期の経済財政に関する試算」における数字と実質的に変わりがない。 目標以上に重要なのは実現の方法である...
【第348回】戦略思考を欠いた米一般教書演説
国基研研究員兼企画委員 冨山泰 この大統領があと1年も米国の外交・安全保障政策のかじ取りをするのか、と暗然たる気持ちになった。オバマ大統領の任期中最後の一般教書演説(1月13日)から読み取れるのは、「イスラム国」などイスラム過激組織との戦いという目前の課題への対処に精いっぱいで、新興大国とりわけ中国からの挑戦という中長期的な難問に思いを巡らすことができない政権末期の指導者の...