【第316回】戦略論から見た安保法制
国基研企画委員 太田文雄 安全保障関連法案が衆議院を通過し、今国会で成立する可能性が高くなった。国会での論戦を見ていると、違憲・合憲論や自衛官に危険が及ぶか否かに議論が集中し、甚だしくは「戦争法案」とか「徴兵制の復活」といったレッテル貼りによるデマゴギーが横行して、長期的な見通しに基づく戦略的見地からの真摯な議論は少なかったように思われる。 ●10年後、20年後の安...
【第315回】朝鮮人戦時動員の実態を広報せよ
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録された。その際、日本大使は、登録された産業施設で戦時中に働いていた朝鮮人労働者について「forced to work under harsh conditions」(厳しい環境の下で労働を強いられた)と演説した。韓国はこの間、これら労働者が「強制労働」をさせられたと国際社会に宣伝してき...
【第314回・特別版】中国を仮想敵国と見なした米軍事戦略
国基研研究員兼企画委員 冨山泰 米軍が中国を今や事実上の仮想敵国と見なしていることをこれほどあからさまに表明した公開文書は寡聞にして知らない。米統合参謀本部が7月1日に公表した「国家軍事戦略」は、中国など4カ国を「潜在的な敵性国家」と呼び、米国の「国家安全保障上の利益を脅かす行動をしている」と言い切った。 ●「潜在的な敵性国家」 4年ぶりの「国家軍事戦略」には注...
【第313回】地道な努力を励ます第2回「日本研究賞」
国基研企画委員・事務局長 石川弘修 国家基本問題研究所が昨年創設した「寺田真理記念 日本研究賞」の第2回受賞者が決まった。 今回の日本研究賞には、愛媛大学法文学部人文学科のエドワード・マークス准教授の「レオニー・ギルモア:イサム・ノグチの母の生涯」が、日本研究奨励賞にはハワイ大学マノア校のデイヴィッド・ハンロン教授の「Making Micronesia: A polit...
【第312回・特別版】日本の貢献を語り、未来のビジョンを示せ
戦後70年談話に望むこと(3) グロービス経営大学院学長 堀義人 戦後70年の首相談話に関する「21世紀構想懇談会」の3回目は日本の戦後の貢献を、6回目は今後のビジョンをそれぞれ討議した。僕の発言要旨を基に、まとめて直言する。 懇談会の委員には歴史学者がたくさんいるため、過去を振り返ることが多くなりがちである。「今週の直言」第310回で紹介したように、ゴー・チョクトン...
【第311回・特別版】謝罪は本当に必要か?
戦後70年談話に望むこと(2) グロービス経営大学院学長 堀義人 安倍晋三首相の戦後70年談話を考える「21世紀構想懇談会」のテーマの一つは、「和解」であった。会合4回目は米国や欧州との和解、5回目がアジア諸国との和解に関して議論した。前回に倣い、僕の発言要旨を簡単に紹介したい。 ●謝罪は和解につながらない (4回目) 「久保文明東大法学部教授と細谷雄一慶...
【第310回】「侵略」への言及は必要か?
戦後70年談話に望むこと(1) グロービス経営大学院学長 堀義人 安倍晋三首相による戦後70年談話を考える「21世紀構想懇談会」の北岡伸一座長代理(国際大学学長)は3月のシンポジウムで、「安倍さんに(日本は)侵略したと言ってほしい」と発言された。その後開催された懇談会後の記者会見でも同様の発言をされた。そして6月25日の第6回会合の後にも、「侵略をしたという事実は、表現は...
【第309回】西半球の対中認識に変化の兆し
国基研企画委員 太田文雄 6月12日、南米コロンビアで行われた米国防大学同窓生セミナーで、「中国の西半球における影響」についての講演を依頼された。米国防大学の外国人留学生はほとんどが大佐クラスで、卒業生の中には母国の陸海軍司令官になっている人物も多い。卒業生としては私の1年後輩である米南方軍司令官ケリー海兵隊大将の基調講演でセミナーは始まったが、彼は今年3月の米上院軍事委員...
【第308回】目を覚ませ、民主党!
衆議院議員 長島昭久 私は、平成12年、政権交代可能な政治勢力を結集したいという一念で、敢えて野党第一党である民主党の門を叩き、3年間の浪人生活を経て平成15年に初当選させていただいた。当時の民主党は、何よりも霞が関・永田町改革の気概に燃え、官僚の助けを借りずに国会ごとに何十本もの議員立法を提出し、古い自民党に代わる徹底した分権・改革を唱え、外交・安全保障政策ではこれまでの...
【第307回・特別版】「座して死を待つ」が国会の総意か
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 集団的自衛権の行使に道を開こうとする安倍晋三首相の姿勢は間違いなく正しいが、連立与党内の妥協や国会対策上の考慮から、自衛権行使における重要要素を毀損しかねない答弁が幾つか見られる。そして、その「誤り」を問題としない国会の状況も異様と言わねばならない。 ●敵基地攻撃は永遠に米国頼みか 6月1日、集団的自衛権の行使によって...