【第271回】価値観外交を危うくする「日朝」の罠
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 北朝鮮拉致問題の「再調査」をめぐっては、日本外交の失態として想起すべき前例がある。福田康夫政権下の2008年 6月13日、北京での日朝協議を終えた斎木昭隆外務省アジア大洋州局長(現事務次官)は、家族会はじめ関係者に対し、北朝鮮が再調査を約束した見返りに、日本側は①人的往来②航空機チャーター便の運航③「人道支援物資」用船舶の入港―の...
【第270回】安易な脱原発は、国家の安全と国民生活を破壊する
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 国基研は、2011年3月11日の東日本大震災の発生後、同年10月28日には、「選ぶべきは脱原発ではありません」と題する意見広告を主要各紙にいち早く発表した。東京電力福島第1原発事故は津波が原因であり、安易な脱原発は国家の安全と国民の生活を脅かすことを警告した。今、その危惧が現実のものとなりつつある。今こそ、情緒論に踊らされること...
【第269回】日本は官民一体で情報戦に立ち向かえ
国家基本問題研究所は19日、都内で催した年に一度の「会員の集い」で「国際情報戦をどう戦うか」と題するシンポジウムを開いた。パネリストからは、日本が戦前から戦後に至るまで国際社会の情報戦で敗れ続けてきた実態が報告され、今日でも日本が官民一体となって情報発信に力を入れない限り、中韓両国との歴史認識問題などで勝つことはできないとの危機感が表明された。 ●一連の敗北 登壇した国基研の田久保忠...
【第268回】日本の対韓外交に真の危機
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 日本の対韓外交が重大な危機を迎えている。といっても、韓国の反日外交のため日韓首脳会談ができないなどの現状を指しているのではない。日本の対韓外交は1965年の国交正常化以来、釜山に赤旗を立てさせない、すなわち北朝鮮主導の統一により半島全体が赤化することを防ぐという戦略目標の下に展開されてきた。ところが、東アジアの冷戦を最前線で戦って...
【第267回】安倍首相は対北外交で米国の轍を踏むな
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 安倍晋三政権が北朝鮮への対応で大きな間違いを犯すのではないかと心配している。北朝鮮との協議が始まると、ようやく開いた窓を閉じさせてはならないとの理屈で、こちらが先に譲歩しなければならないという議論が必ず出てくる。 2002年の小泉純一郎首相の初訪朝直後、当時の田中均外務省アジア大洋州局長らは「日本に戻った拉致被害者を北朝鮮に返...
【第266回】オバマ大統領はテロ組織と戦えるか
国基研副理事長 田久保忠衛 2001年の米同時多発テロに際して、当時のブッシュ大統領がアフガニスタン、イラクへの戦いを広げたのは完全に失敗だったとの俗説が米国内でも日本国内でも定着した感があったが、どうも最近の中東情勢を見ていると、その評価は逆転し、ブッシュ政権は正しかったのではないかとの評価がよみがえってきたような印象を受ける。 確かにブッシュ政権は巨額の戦費を費やし...
【第265回】中国海軍の弱点を突く自衛隊の役割
国基研企画委員 太田文雄 9月19日、トシ・ヨシハラ米海軍大学教授の「アジアの海洋における日本の将来の役割」という講演を拝聴した。講演の骨子は「中国海軍の海洋進出阻止のため、日本は南西諸島沿いに潜水艦の配備、機雷敷設、高速艇によるゲリラ攻撃、そして陸上自衛隊対艦ミサイルの配備を行うことにより、米軍が攻勢作戦をとるまで中国海軍の艦艇を第一列島線内に封じ込めることが中国を相手に...
【第264回】ワシントン訪問で感じたこと
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 国基研訪米団の一員として、約1週間ワシントンで研究者や議会関係者らと意見交換を行い、9月14日に帰国した。「米政府は尖閣を明確に日本領と認めるべきだ」などの発言で知られ、2016年大統領選挙に向け去就が注目される「レーガン保守」(レーガン元大統領の理念に共鳴する保守派)のホープ、マーコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ州、43歳)に...
【第263回】「イスラム国」との戦いはオバマ外交の転機になるか
国基研研究員兼企画委員 冨山泰 イラク北西部からシリア北東部にまたがる地域を支配する超過激なイスラム主義組織「イスラム国」が米人人質を相次いで殺害したことで、米国内の「内向き」ムードに変化の兆しが見られる。海外での軍事力行使に消極的だったオバマ政権の外交姿勢がイスラム過激派との対決をきっかけに転換するかどうかを注視する必要がある。 ●米世論に変化の兆し 米国世論...
【第262回】幾重にも歪んだ外務省の「性奴隷」弁明
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 国際法における「奴隷」概念の変遷を、包括的な概論書『オックスフォード・ハンドブック 国際法の歴史』(オックスフォード大学出版会)で調べていて、視線が一点に釘付けになった。同時に、「やはり」「何と愚かな」という言葉が口をついて出た。奴隷売買者(Slavers)と題した節に、「いつ奴隷貿易および奴隷化が慣習国際法違反とされるに至ったか...