【第162回】国会では国益をめぐる「攻防」を
国基研企画委員・横浜市立大学客員教授 松田学 「解散をめぐる攻防」という言葉が紙面に躍っている。政策をめぐる攻防ではない。政治は「国益」という価値を国民に提供する機能であり、何が国益であるかを国民に説得し、合意を得るのが選挙である。しかし、政権をめぐる党利党略と、落選したくない議員たちの「就活」の劇場と化した最近の政界は、私益追求の場に成り果てたように見える。 国民の政治不信が言われる...
【第161回】2049年までに世界の海洋支配が中国の夢
国基研評議員 平松茂雄 中国海軍初の空母「遼寧」号が就航する一方、中国海軍の艦隊がわが国の沖縄本島と宮古島の間の海域を通過して、西太平洋に出て演習を実施したと報じられた。 次の目標は本格空母の建造 空母「遼寧」はソ連の崩壊で建造が中断していたのを、中国がウクライナから購入して完成させた。当初「ワリヤーグ」という名前をそのまま使っていたが、最近母港の所属する省名に変更したばかりである。...
【第160回】安倍氏逆転劇は「民意の軽視」か?
国基研理事・拓殖大学大学院教授 遠藤浩一 逆転劇で自民党新総裁に安倍晋三元首相が選出されたことに関して、「地方票の軽視」とか、甚だしきは「民意の無視」といつた批判が一部から出てゐる。 同氏への攻撃を社是とする一部マスメディアはともかく、自民党の地方組織幹部までが怒りをあらはにして辞表を叩きつけるといふ事態はいただけない。自民党員諸賢は、もう少し冷静になつたはうがいい。 国会議員の...
【第159回】「尖閣」緊迫を機に対中政策の戦略的転換を
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 尖閣諸島の奪取を狙った中国の動きは、日本自らが、軍事力を含むあらゆる手段を用いて斥しりぞけねばならない。その態勢が出来て初めて、日米同盟の抑止力も追加的に生きてくる。中国側は習近平(次期国家主席?)以下さまざまなレベルで、アメリカに対し日米安保条約5条(武力攻撃に共同対処)を尖閣に適用せぬよう圧力をかけている。日本側は逆に、領有権も含めて日本の立場...
【第158回】韓国保守派は李大統領を諫めよ
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 李明博大統領の突然の竹島訪問と天皇陛下への礼儀に反する発言をきっかけに、日韓関係が悪化している。少なくとも日本人の対韓感情は昭和40年の国交正常化以降で最悪になった。 歴史認識の一致を求める愚 これは、李大統領が日本に対して無理やり歴史認識の一致を要求してきたことを原因としている。日本は竹島の領有権主張を一度も下ろしたことはない。日本が右傾...
【第157回】尖閣を放置する首相に政権担当資格なし
国基研理事長 櫻井よしこ 野田佳彦首相は尖閣諸島を買い取っても、島を放置する方針だ。首相に出来る最大限の措置は国有化にとどまり、いま最も必要な尖閣諸島の領有を、漁民のための船だまりや通信施設の整備によって形にして示すことには手をつけない心算づもりだと見て間違いない。石原慎太郎都知事が、広く国民から募った約14億円をそっくり国に渡すと言っていた考えを変えて、都の手元にとどめると発言し始めたのも...
【第156回】拉致被害者全員の帰還は譲れない
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 8月29日、北京で4年ぶりに日朝政府間協議が行われた。課長級の予備協議という位置づけで、協議は予定より1日延び、31日に、双方の関心がある事項について本協議を持つことで合意した。日本側は当然、そこには拉致問題が含まれると発表したが、北朝鮮はそのことを明言していない。 遺骨1体400万円を要求? そもそも今回の政府間協議は、北朝鮮が日本人戦没...
【第155回】アーミテージ=ナイ報告の意義と二つの疑問点
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 米国の超党派の知日派がまとめ、8月15日に発表されたアーミテージ=ナイ報告は、日米両国が経済的にも軍事的にも強国であり続けねば、自由、民主、法の支配、人権といった価値観に基づく国際秩序は確保できないと主張する。非常に優れた提言集と評価したい。慰安婦問題などで日韓が揉めれば敵を利するだけとの認識も誠に正しい。その上で、議論の活性化のため、あえて率直な...
【第154回】尖閣防衛策に直ちに取り掛かれ
川村純彦研究所代表・国基研客員研究員 川村純彦 8月17日、野田政権は、尖閣諸島の魚釣島に不法侵入した中国人14人を送検せず、簡単に本国へ送還した。この法治国家としてあるまじき愚行が、中国側に「日本与くみし易し」との認識を与えたことは確実であり、今後、侵犯行為が繰り返されるとともに、事態が更にエスカレートするのは疑いない。 可能性高い中国軍の上陸 尖閣には、かつて100隻以上の中国漁...
【第153回】反原発一辺倒の主要メディアは無責任
国基研理事長 櫻井よしこ 首相官邸周辺で金曜日ごとにデモが行われ始めて5か月目、参加者は福井県・大飯原発の再稼働決定以降増え始め、一時は15万~18万人に上ったと主催者は発表、他方警視庁は1万7000人と発表した。 7月30日の朝日新聞は社説で「1960年の安保闘争から半世紀。これほどの大群衆が、政治に『ノー』を突きつけたことはなかった」、「『もの言わぬ国民』による異議申し立て」であり...