【第381回】中国軍艦の尖閣接近を常態化させるな
国基研企画委員 太田文雄 6月9日未明に中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島の接続水域(領海の外側12カイリの水域)に進入した。1992年に中国が設定した領海及び接続水域法第2条第2項は尖閣諸島を中国の領土と規定しており、さらに同法第13条は「中華人民共和国は接続水域内において(中略)管轄権行使の権限を有する」としている。従って、今回のようにロシア海軍艦艇3隻が「中国の領土...
【第380回】増税延期と財政出動でアベノミクスはよみがえる
産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男 安倍晋三首相は2019年10月へ消費税増税を先送りしたが、アベノミクスにとって残された期間は事実上あと2年余である。安倍氏の自民党総裁任期、2018年9月より前に脱デフレを達成できなければ、安倍政権が終わるばかりではない。最悪の場合、国政は再び迷走し、憲法改正の機運も消滅しよう。 そんな危機感をだれよりも強く持っているのは安倍首...
【第379回・特別版】ホタテ、ワカメが泣いている
国基研理事 古庄幸一 5月21日、宮城県の気仙沼湾で行われた「第5回東日本大震災気仙沼海上供養祭」に出席し、大震災から5年が過ぎた気仙沼(宮城県)と陸前高田(岩手県)の復興の現状を見る機会を得た。この供養祭は、民間ボランティアが主催し、気仙沼市等は後援者として、未だ行方不明の多くの方々を洋上で供養し、併せて気仙沼の復興を考えるために毎年行われている。海上供養祭を終えた船...
【第378回】世界のナショナリズム台頭に備えよ
国基研理事長 櫻井よしこ 独立国家に経済力と軍事力が必須なように、政治には理想と現実認識が必要である。 オバマ米大統領にとって、広島訪問は核廃絶の理想を再び高く掲げる好機だった。 大統領と被爆者の抱擁に象徴される広島訪問は安倍外交の成果であり、この訪問を98%の日本国民が評価した(共同通信世論調査)。しかし、現実は甘くない。ニューヨーク・タイムズ紙は社説で、安倍...
【第377回・特別版】安倍政権の植民地的パフォーマンス
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 米大統領が主要閣僚をホワイトハウスに招集し、増税を含む経済政策について日本の首相ブレーンから教えを請い、その姿をメディアに大きく報じさせるなどというのは、およそあり得ない光景だろう。ところが日本ではそうではない。 5月19日、オバマ政権下で経済諮問委員長を務めたクリスティーナ・ローマー教授(カリフォルニア大学バークレー校)の夫...
【第376回】自然体でいなした「92年合意」
国基研副理事長 田久保忠衛 5月20日に台湾民進党の蔡英文主席は第14代総統に就任した。台湾史上初の女性総統が中国に接近していた国民党の馬英九前政権に比べてどのような方向性を打ち出すのかに関心を抱いていた私は、「自然体」と言っていい淡々とした就任演説にホッとした。 ●台湾新総統の就任演説 就任演説は理路整然さを要請される学会での報告ではない。台湾にいるのは...
【第375回・特別版】米が警戒する中国軍の三つの動き
国基研研究員兼企画委員 冨山泰 米国防総省は5月13日、中国の軍事力に関する年次報告書を公表した。この中で、2015年1年間に中国は、①南シナ海の人工島で軍事施設の建設を始めた②アフリカ東部のジブチに軍事施設を設置することを発表し、地球規模の軍事プレゼンス拡大に着手した③軍の大々的な組織改革を実行した―という3点で新たな動きがあったと指摘し、中国の軍事動向に強い警戒心を示し...
【第374回】身勝手な国民が日本を滅ぼす
国基研理事長 櫻井よしこ こんなに身勝手な日本人がいるのか。 種々の世論調査で60%前後の人々が「憲法9条は変えない方がよい」と答える中で、週刊誌AERA(5月16日号)が11都府県の700人に行った対面調査結果のことである。「自衛のためなら戦争を認めるか」「自衛のためでも認めないか」との問いに、全体では「認める」が53.6%だったが、女性はどの世代も、自衛であって...
【第373回・特別版】新味に欠けた北朝鮮党大会
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 北朝鮮の労働党大会が6日から9日まで36年ぶりに開催された。「70日間闘争」と称して党大会の準備に国民を強制動員し、海外の外交官や貿易関係者、派遣労働者らに多額の外貨上納を求めるなど、国民生活に多大な負担をもたらしたが、新方針は何も打ち出されなかった。 ●5大国並みの扱いを要求 特筆されるべきは、中国共産党が代表を送...
【第372回】トランプ氏の「偉大な」アメリカ
国基研客員研究員・AEI客員研究員 加瀬みき 「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン」(アメリカを再び偉大に)は、共和党大統領候補となることが事実上確定したドナルド・トランプ氏の選挙スローガンだ。この一句がトランプ氏への支持の背景と同盟国にもたらす危険を捉とらえている。 2012年11月にオバマ大統領が再選を果たした数日後、トランプ氏はこのフレーズを商標登録した。そもそ...