【第390回】 元慰安婦の8割が日韓合意を支持
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 昨年末の日韓合意に基づき、韓国政府は7月28日、元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を発足させた。発足式では合意反対派の運動家が抗議行動に出て、理事長に就任した金兌玄・誠信女子大名誉教授に唐辛子成分を浴びせる騒動を起こした。 挺身隊問題対策協議会(挺対協)をはじめとする合意反対派は「当事者の意思を排除した財団発足に反対」との...
【第389回】「自由世界のリーダー」はどこへ
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 「アメリカを再び偉大にしよう」を最初に米大統領選挙のスローガンに用いたのは、1980年の共和党候補ロナルド・レーガン氏であった。リベラル派はレーガン氏を単細胞で危険な人物と批判したが、今では「自由世界のリーダー」にふさわしい理念と意志を持った政治家との評価が固まった観がある。 しかし、同じスローガンを唱えるドナルド・トランプ氏...
【第388回】必要な南シナ海監視の国際的枠組み
国基研事務局長 黒澤聖二 南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の裁定を受けて、ウランバートルで開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会合は「国際法や国連海洋法条約の諸原則に基づく紛争解決」をうたう議長声明を採択、名指しは避けながらも、裁定の尊重を中国に促した。しかし、いくら正論であっても中国は聞く耳を持たない。一方、裁定を詳細に見れば、海洋国家日本が手放しで喜べな...
【第387回・特別版】公平中立だった南シナ海仲裁裁判
国基研事務局長 黒澤聖二 フィリピンが中国との間で争う南シナ海の紛争に関する仲裁裁判の裁定が出た。7月12日の裁定は、中国が主張する「9段線」内部の歴史的権利を否定するなど、フィリピンの言い分をほぼ全面的に認めた。中国は予想通り裁定を「断固拒否」(外務省)したが、仲裁裁判所は中国に反論の機会を与えた上、ベトナムやマレーシアの主張も考慮するなど、公平中立に徹したと評価できる。...
【第386回】大政治家か否かは改憲姿勢で分かる
国基研副理事長 田久保忠衛 7月10日投開票の参院選で、自民、公明両党などいわゆる改憲勢力が非改選議員を含めて憲法改正発議要件である総議席の3分の2を上回る議席を確保したから、与党の大勝と称しても間違いないのだが、それにしても奇妙な選挙だった。かねて改憲論者だった安倍晋三首相は「改憲を争点にしない」と消極的発言を繰り返し、対照的に野党民進党の岡田克也代表は目を三角にして...
【第385回】米欧の社会不安がもたらす国際秩序の新局面
国基研副理事長 田久保忠衛 英国の欧州連合(EU)離脱の是非について、国際情勢の客観的分析者であれば価値判断を軽率に下すべきではないと考える。離脱に票を入れた52%の英国人は愚鈍な人たちなのだろうか。良い悪いは別にして、国際秩序はこのような形でいつの間にか新しい局面を迎えるものだと私は見ている。 ●民主主義国に共通する国民の不満 注目すべき点の第一は、第2次...
【第384回】共有できなかった欧州統合の理念
読売新聞編集委員 三好範英 欧州連合(EU)離脱を巡る英国民投票で、他のEU加盟国はそろって英国の残留を望んでいた。離脱決定により大陸欧州に激震が走ったといっても誇張ではない。ドイツのメルケル首相は声明で、「英国民の決定はとても残念。今日は欧州統合プロセスにとっての転機」と率直に表明した。言葉に力はなく、あたかも求愛が片思いだったことが分かって途方に暮れる恋人のような趣があ...
【第383回】英のEU離脱から学ぶべきこと
産経新聞外信部編集委員 内藤泰朗 欧州連合(EU)離脱派が6月23日の英国民投票で勝利した。早速、世界同時株安となり、英ポンドが暴落するなど通貨不安が膨らんで、世界に衝撃が走っている。これを機に2008年のリーマン・ショックをしのぐ金融危機の再来を予測する向きもある。グローバリズムの旗頭だった英国が、自ら移民を制限する反グローバリズムやナショナリズムに傾斜したのは皮肉だが、...
【第382回】国際法からみた中国軍艦の領海侵入
国基研事務局長 黒澤聖二 6月15日、中国軍艦が鹿児島県口永良部島周辺のわが国領海(トカラ海峡)内を通航した。ここは領海で覆われた海域で、そこを中国海軍のドンディアオ級情報収集艦が南東方向へ抜けたのである。海上自衛隊のP-3C哨戒機が発見、追尾し、警告したにもかかわらず、情報収集艦は約2時間半にわたり領海内を通航した。9日に尖閣諸島の領海外側の接続水域を中国海軍のフリゲート...
【第381回】中国軍艦の尖閣接近を常態化させるな
国基研企画委員 太田文雄 6月9日未明に中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島の接続水域(領海の外側12カイリの水域)に進入した。1992年に中国が設定した領海及び接続水域法第2条第2項は尖閣諸島を中国の領土と規定しており、さらに同法第13条は「中華人民共和国は接続水域内において(中略)管轄権行使の権限を有する」としている。従って、今回のようにロシア海軍艦艇3隻が「中国の領土...