【第443回】米国防長官の毅然たる対中姿勢
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 6月3日、マティス米国防長官がシンガポールのアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で行った演説は、トランプ政権が北朝鮮の核・ミサイル開発阻止のため中国に協力を求めても、南シナ海や台湾といった他の重要な地域問題で中国に対して米国の基本的立場を譲らないことを宣言したという点で重要な意味があった。 ●南シナ海での行動を批判 アジアの平和...
【第442回】「邦人救出」を対中外交の優先課題に
産経新聞外信部次長 矢板明夫 中国で温泉探査などの地質調査を行うために3月に訪中した千葉県の地質調査会社の社員ら日本人男性6人が、スパイ容疑などで中国治安当局に拘束されたことが明らかになった。2015年以降、中国で「国家安全危害罪」などで拘束された日本人は計11人になった。異常な状態である。 拘束された日本人の中には、中小企業の会社員、日本語教師、パチンコ店のアルバイト...
【第441回】「トランプ弾劾」一色の報道に異議あり
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 NHKや朝日新聞など日本の大手メディアの報道では、ロシアの米大統領選介入疑惑やそれに関連した捜査妨害でトランプ米大統領が国民の信を失い、弾劾への流れが出来つつあるかのような印象操作が目立つ。しかも独自取材に基づかず、米国の3大テレビ網やCNN、ニューヨーク・タイムズといった主流メディア(ほとんどが民主党支持)の報道を、より単純化し...
【第440回・特別版】中国に甘いトランプ政権
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 北朝鮮の核問題で中国の協力取り付けを最優先するトランプ米政権のアジア外交で、中国への甘い対応が目に付く。米政府外においても、4月26日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説に見られるように、北朝鮮が非核国家になるのであれば、金正恩体制に代わる親中政権の樹立を容認してもよいとの意見まで出てきた。中国の戦略に沿ったアジアの新秩序づくりを米国...
【第439回】改憲へ向けた首相の重い政治判断
国基研理事長 櫻井よしこ 停滞の極みにある憲法改正論議に5月3日、安倍晋三首相が斬り込んだ。①2020年までに改正憲法を施行したい②9条1項と2項を維持しつつ、自衛隊の存在を明記する規定を追加したい③国の基もといは立派な人材であり、そのための教育無償化を憲法で担保したい―という内容だ。 ●「政治は結果だ」 9条1項は、平和主義の担保である。2項は「陸海空軍その他...
【第438回・特別版】保守中道連合失敗で韓国が最悪の選択
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 5月9日、韓国で大統領選挙が行われ、左派「共に民主党」の文在寅候補が41.1%の得票率で圧勝した(開票率99%現在、以下同)。2位の保守派「自由韓国党」の洪準杓候補が24%、3位の中道派「国民の党」の安哲秀候補が21.4%だった。 4月初めには安氏が保守票を集めて1位の文氏と並んだが、その後、テレビ討論の失敗などで急速に支持を失...
【第437回】理不尽な民進党のテロ等準備罪反対
国基研理事長 櫻井よしこ 衆院法務委員会は5月2日、テロ等準備罪を新設する法案の審議を始めたが、民進党が審議拒否に入った。同党の山尾志桜里前政調会長は、自民党の手法は「出来損ないの『共謀罪』を一刻も早く通したいという強権的なやり方」だと非難した。 民進党の主張は私には不条理に思える。共謀罪を巡る同党の、11年前の議論と今日のそれを比べれば、彼らの反対は理解を超える理不尽...
【第436回】中露の北朝鮮擁護を許すな
国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博 戦争の犠牲もいとわぬ「瀬戸際政策」は、北朝鮮が長く対米外交に使ってきた得意手である。それを今回の朝鮮半島危機では、逆に米国のトランプ政権が用いているように見える。オバマ前政権が「戦略的忍耐」を名目に、北の核開発を放置してきたツケの処理である。ティラーソン国務長官が国連安保理閣僚級会合で「いま行動することに失敗すれば災いを招く」と...
【第435回】韓国大統領選は「最悪」と「次悪」の選択か?
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 韓国で5月9日に大統領選挙の投票が行われる。朴槿恵大統領の罷免決定を受け、12月に予定されていた選挙が7カ月前倒しされた。 大統領直接選挙制を定めた現憲法が1987年に制定されて以来、韓国の政治は常に北朝鮮からの政治工作という強い磁場の中で、反共保守派の自由民主主義陣営と従北左派陣営の間で激しい戦いが繰り広げられてきた。韓国の政...
【第434回】米露は対立演出の一方で関係調整も
国基研企画委員・拓殖大学海外事情研究所教授 名越健郎 4月12日のティラーソン米国務長官の訪露では、米軍のシリア政府軍基地への攻撃をロシア側が「違法」と非難するなど、対立がクローズアップされた。トランプ米政権が対露融和外交に乗り出すとの当初の予測は吹き飛び、「米露の信頼関係は(オバマ前政権時代より)悪化している」(プーチン・ロシア大統領)とされる。トランプ、プーチン両政...