【第431回】遅きに失する敵基地攻撃能力の検討
国基研企画委員 太田文雄 北朝鮮の核ミサイル開発の進行を受け、自民党は3月30日、敵基地攻撃能力の保有を検討するよう政府に提言した。提言したのは「検討」であり「保有すべし」とまでは言っていない。検討の後、保有すべきだとの結論を得るとしても、それまで数年を要し、それから開発に至るにはさらに10年以上を要するであろう。敵基地攻撃能力は探知能力と攻撃能力に大きく分けられ、その両方...
【第430回・特別版】拉致被害者救出運動20年に想う
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 家族会と救う会が北朝鮮による拉致被害者の救出運動を始めて20年が経った。政府認定被害者が最初に拉致されてからでは40年が経っている。しかし、認定被害者17人のうちたった5人しか助けられていないし、認定された人以外にも確実に被害者は存在する。被害者が全部で何人なのかさえ、いまだに明らかにできていない。なぜ、このように惨めな状況なのか...
【第429回】手詰まり感否めぬ米の対北戦略
国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博 3月に東アジアを初訪問した米国のティラーソン国務長官は、北朝鮮に対する「戦略的忍耐は終わった」と宣言した。では、北朝鮮の核開発を断念させる手立ては、本当に残されているのだろうか。オバマ前政権の「戦略的忍耐」という不作為のおかげで、北朝鮮はすでにソウル、東京、グアムを破壊する能力をほぼ手中に収めている。長官が「あらゆる選択肢を検討...
【第428回】学術会議は中国に協力し自衛隊に協力しないのか
国基研企画委員 太田文雄 新聞報道によれば、日本学術会議は大学などの軍事研究を禁じた過去の方針を継承する新たな声明案をまとめたようだ。3月13日付の「今週の直言」で筆者は弾道ミサイル防衛のためにはレーザーなど指向性エネルギー兵器の研究開発が必要であることを論じたが、日本の大学で行われているレーザー関連の研究学会には多くの中国人学者が参加している。そうした学者の研究成果は中国...
【第427回・特別版】北朝鮮ミサイルへの防御態勢構築を急げ
国基研企画委員 太田文雄 北朝鮮は3月6日朝、改良型スカッドと見られる弾道ミサイル4発を日本海に撃ち込んだ。今回の弾道ミサイル発射の軍事的意味合いを考察し、今後の予測と日本が取るべき対応について述べてみたい。 ●攻撃能力向上は明らか 北朝鮮の地上からの弾道ミサイル同時発射は、昨年8月3日の2発、9月5日に西岸から日本の排他的経済水域に3発の弾道ミサイルを発射させ...
【第426回】大統領弾劾成立で孤立する韓国保守派
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 3月10日、韓国の憲法裁判所は朴槿恵大統領の弾劾を決めた。8人の判事全員一致の決定だった。ずさんな事実認定と法解釈に言葉も出なかった。 そもそも、大統領直選制をとる韓国憲法では、国会は大統領の政治責任を問うことができない。ただ、大統領が重大な憲法違反や法令違反を犯した場合に限り、国会は総議席の3分の2の賛成をもって「弾劾訴追」...
【第425回】トランプ演説への高い評価は長続きしない
国基研理事兼企画委員 石川弘修 トランプ米大統領は2月28日の米上下両院合同会議で初の施政方針演説を行い、米国精神の再生をスローガンにテロ対策の強化や経済活性化を訴えた。それまでの過激な主張を抑制し、将来に希望を抱かせる楽観的なメッセージを発信したことで、一般国民から高い評価を得た。日ごろトランプ政権に批判的なCNNテレビが演説直後に行った緊急世論調査では、視聴者の78%が...
【第424回・特別版】韓国で左派を圧倒した保守派の集会
国基研企画委員・東京基督教大学教授 西岡力 3月1日午後、ソウルの中心街は韓国の国旗を掲げる太極旗集会の人波であふれた。今年に入り保守派の集会が左派集会を超える参加者を集めるようになってから、警察は左派の圧力を受け人数の公表を中止しているので正確な数は不明だ。しかし、左派が最高に参加者を集めた昨年12月の集会が警察発表で27万人であり、1日はその時よりも広い面積にほとん...
【第423回】日露「2プラス2」会合に望む
北海道大学名誉教授 木村汎ひろし 3月20日、東京で日露間の「2プラス2」会合が開かれる。「2プラス2」とは何か? 外交、安全保障分野における2国間の協力や共通の戦略について話し合う定期協議の枠組みを指す。日本とロシアから外相と防衛相という閣僚2人ずつが参加するので、「2プラス2」と略称される。 2013年4月末に安倍晋三首相がモスクワを訪問した際に、日露両国は「2プラ...
【第422回】トランプ政権への懸念と期待が交錯した日米印対話
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 2月16~17日、国基研の同僚3人と共にニューデリーへ出張し、インドのシンクタンク「ビベカナンダ国際財団」(VIF)との2者対話と、米ハドソン研究所の研究者を交えた3者対話に参加した。参加者の最大の関心事は当然ながらトランプ米新政権の動向だった。 2日間の会議を通じて、日本とインドの研究者はトランプ大統領への懸念を共有していた。私は、安倍...