【第496回】トランプ政権の安保戦略は堅実
国基研企画委員 太田文雄 トランプ米政権が昨年12月に公表した「国家安全保障戦略」(NSS)、今年1月の「国家防衛戦略」(NDS)、そして今月の「核態勢見直し」(NPR)という一連の戦略文書を総括してみると、トランプ大統領自身が署名したNSSの巻頭言を除けば、中長期的視野に立った極めて堅実な戦略体系になっていると言える。 ●NSS巻頭言の問題点 トランプ大...
【第495回】演説で語られなかった米の対中戦略
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 トランプ米大統領は1月30日の一般教書演説の外交・安全保障部分で、米国に挑戦する存在として、北朝鮮やイランといった「無法国家」、過激組織「イスラム国」(IS)などの「テロ集団」、そして中国とロシアのような「ライバル国」の三つを挙げた。しかし、演説で中国の覇権主義的行動を具体的に批判することはなく、拍子抜けであった。 ●「ライバル国...
【第494回・特別版】北が仕掛けた軍事パレードの罠
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 安倍晋三首相が2月9日の平昌五輪開会式に出席するため訪韓すると発表した。文在寅韓国大統領との首脳会談も同日持たれるという。北朝鮮は、経済制裁と軍事圧力が効いてきたから文政権に接近してきた。これは想定内で、安倍首相は文政権が北の「逃げ道」を提供しないようにすることが大切だ、訪韓前に、まず東京へ来るペンス米副大統領と対北朝鮮圧力強化...
【第493回】米の復帰表明に惑わされず、TPP11の実現に注力せよ
国基研企画委員・東京国際大学教授 大岩雄次郎 トランプ米大統領は、25日の米CNBCテレビのインタビューに続き、26日にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)の演説で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への復帰へ向けて「交渉を検討する」と明言し、周囲を驚かせた。ただし、交渉項目やスケジュール等については言及しておらず、その真意は不透明であ...
【第492回】北朝鮮の五輪参加は文政権の裏切り
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 2月9日から韓国の平昌で開催される冬季五輪に北朝鮮が参加することが決まった。韓国の文在寅政権が主催国の特権で北朝鮮へのえこひいきを押し通した結果だ。アイスホッケー、スキー、スケートの3競技10種目に北朝鮮選手22人の参加が認められたが、フィギュアスケートのペア以外は出場資格を獲得していなかった選手ばかりだ。日本を含む競技関係者か...
【第491回】中国軍の活発な行動を警戒せよ
国基研企画委員 太田文雄 中国人民解放軍海軍の潜水艦が11日に沖縄県尖閣諸島の大正島周辺の接続水域を潜行したまま航行した。フリゲート艦も随伴した。最近の中国は広域経済圏構想「一帯一路」に日本を取り込みたいためか微笑外交を重ねてきたが、一方で尖閣の領有を企図した軍事行動を活発化していることに我々は目をつむるべきではない。 今回の航行目的の一つは、日本の潜水艦探知能力を...
【第490回・特別版】明治150年、先人の英知に学べ
国基研理事長 櫻井よしこ 新しい年、平成30年は、日本のみならず世界にとって大きな分岐点となる年だ。伝統的な米国の価値観と中国のそれがより顕著にせめぎ合う年と言ってよいだろう。日本の命運も大きく左右される変化の前で、あらゆる国のあらゆる人材が力を尽くす1年になる。国基研にとっては、創設以来掲げてきた憲法改正の実現に向けて、果敢に提言し続ける1年でもある。 ●米国...
【第489回】中国リスクに備え民主主義国の連帯が必要
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 2018年を迎えて、新年の国際情勢予想が欧米メディアをにぎわせている。焦点の一つは中国の影響力拡大であり、トランプ政権の米国第一主義によって生ずる世界秩序の空白を中国が埋めることを警戒する声が上がる一方で、中国の拡張主義への抵抗が世界各地で強まるという予測もあり、国際社会の先行きを不透明にしている。 ●地政学上の危機 中国への...
【第488回・特別版】はた迷惑だった韓国の慰安婦合意検証
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 12月27日、韓国外相直属の「慰安婦合意検証タスクフォース」が、慰安婦問題に関する日韓合意(平成27年12月28日)の検証結果を記載した報告書を発表した。韓国語の全文を通読したが、一言で言うと、国内の政争を外交に持ち込んだ、日本としてははた迷惑な内容だった。 ●政争の具に外交を使う 報告書は合意に対して4つの否定的評...
【第487回】同盟国の研究には、好意的かつ客観性が必要だ
国基研副理事長 田久保忠衛 今年を振り返って目立った国際情勢の特徴を挙げよと言われたら、無謀な核・ミサイル実験を続けてきた北朝鮮、「危険な台頭」をためらおうともしない中国、大統領の言動が予測不可能な米国の三カ国ということになろうか。北朝鮮と中国については日本における研究もかなり進んでいるが、同盟国として誰もがなじんでいるはずのトランプ政権の性格はいまだ正確に分析されてい...