【第441回】「トランプ弾劾」一色の報道に異議あり
国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一 NHKや朝日新聞など日本の大手メディアの報道では、ロシアの米大統領選介入疑惑やそれに関連した捜査妨害でトランプ米大統領が国民の信を失い、弾劾への流れが出来つつあるかのような印象操作が目立つ。しかも独自取材に基づかず、米国の3大テレビ網やCNN、ニューヨーク・タイムズといった主流メディア(ほとんどが民主党支持)の報道を、より単純化し...
【第440回・特別版】中国に甘いトランプ政権
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 北朝鮮の核問題で中国の協力取り付けを最優先するトランプ米政権のアジア外交で、中国への甘い対応が目に付く。米政府外においても、4月26日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説に見られるように、北朝鮮が非核国家になるのであれば、金正恩体制に代わる親中政権の樹立を容認してもよいとの意見まで出てきた。中国の戦略に沿ったアジアの新秩序づくりを米国...
【第439回】改憲へ向けた首相の重い政治判断
国基研理事長 櫻井よしこ 停滞の極みにある憲法改正論議に5月3日、安倍晋三首相が斬り込んだ。①2020年までに改正憲法を施行したい②9条1項と2項を維持しつつ、自衛隊の存在を明記する規定を追加したい③国の基もといは立派な人材であり、そのための教育無償化を憲法で担保したい―という内容だ。 ●「政治は結果だ」 9条1項は、平和主義の担保である。2項は「陸海空軍その他...
【第438回・特別版】保守中道連合失敗で韓国が最悪の選択
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 5月9日、韓国で大統領選挙が行われ、左派「共に民主党」の文在寅候補が41.1%の得票率で圧勝した(開票率99%現在、以下同)。2位の保守派「自由韓国党」の洪準杓候補が24%、3位の中道派「国民の党」の安哲秀候補が21.4%だった。 4月初めには安氏が保守票を集めて1位の文氏と並んだが、その後、テレビ討論の失敗などで急速に支持を失...
【第437回】理不尽な民進党のテロ等準備罪反対
国基研理事長 櫻井よしこ 衆院法務委員会は5月2日、テロ等準備罪を新設する法案の審議を始めたが、民進党が審議拒否に入った。同党の山尾志桜里前政調会長は、自民党の手法は「出来損ないの『共謀罪』を一刻も早く通したいという強権的なやり方」だと非難した。 民進党の主張は私には不条理に思える。共謀罪を巡る同党の、11年前の議論と今日のそれを比べれば、彼らの反対は理解を超える理不尽...
【第436回】中露の北朝鮮擁護を許すな
国基研企画委員・産経新聞特別記者 湯浅博 戦争の犠牲もいとわぬ「瀬戸際政策」は、北朝鮮が長く対米外交に使ってきた得意手である。それを今回の朝鮮半島危機では、逆に米国のトランプ政権が用いているように見える。オバマ前政権が「戦略的忍耐」を名目に、北の核開発を放置してきたツケの処理である。ティラーソン国務長官が国連安保理閣僚級会合で「いま行動することに失敗すれば災いを招く」と...
【第435回】韓国大統領選は「最悪」と「次悪」の選択か?
国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力 韓国で5月9日に大統領選挙の投票が行われる。朴槿恵大統領の罷免決定を受け、12月に予定されていた選挙が7カ月前倒しされた。 大統領直接選挙制を定めた現憲法が1987年に制定されて以来、韓国の政治は常に北朝鮮からの政治工作という強い磁場の中で、反共保守派の自由民主主義陣営と従北左派陣営の間で激しい戦いが繰り広げられてきた。韓国の政...
【第434回】米露は対立演出の一方で関係調整も
国基研企画委員・拓殖大学海外事情研究所教授 名越健郎 4月12日のティラーソン米国務長官の訪露では、米軍のシリア政府軍基地への攻撃をロシア側が「違法」と非難するなど、対立がクローズアップされた。トランプ米政権が対露融和外交に乗り出すとの当初の予測は吹き飛び、「米露の信頼関係は(オバマ前政権時代より)悪化している」(プーチン・ロシア大統領)とされる。トランプ、プーチン両政...
【第433回・特別版】テロ等準備法、反対のための反対をやめよ
国基研理事長 櫻井よしこ 日本が国際組織犯罪防止条約に加入するために必要な国内法であるテロ等準備罪に、朝日新聞や民進党などが全面否定の論陣を張っている。 中国の膨張主義、北朝鮮の脅威、左傾化する韓国に加えて、トランプ米大統領のシリア攻撃が国際社会の秩序に及ぼす影響も見定め難い。国際情勢は不安定で、厳しさを増すばかりだ。2020年の東京五輪もあり、日本を狙ったテロや犯...
【第432回】米中関係で警戒すべき「相互尊重」
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 4月6~7日、米フロリダ州の別荘に習近平中国国家主席を招いて開いた初の米中首脳会談で、トランプ米大統領は最大の懸案の北朝鮮問題と貿易不均衡問題で強い不満を伝え、中国に厳しい姿勢を取った。これはよいことだ。しかし、両首脳は「相互尊重」を基礎に意見の相違を管理することで合意したと米中双方から説明があったのは気に掛かった。 相互尊重という言葉は...