【第621回・特別版】東電元経営者無罪判決で思うこと
国基研理事・東京工業大学特任教授 奈良林直 東京電力の福島第1原発の事故をめぐり、旧経営陣3人が業務上過失致死罪で強制起訴された裁判で、東京地裁は全員に無罪の判決を言い渡した。主な争点は、巨大津波を予見できたかどうかだった。政府の専門機関による地震予測「長期評価」を受け、東電子会社が「最大15.7mの津波」が原発に襲来する可能性があるとの試算を出し、3人は社内会議でこの情報...
【第620回】緊張高まる中東情勢と日本のエネルギー政策
日本エネルギー経済研究所参与 十市勉 9月14日、サウジアラビア東部の重要な石油施設2カ所が無人機(ドローン)と巡航ミサイルによる攻撃を受けて炎上、原油生産が半減したため世界のエネルギー市場に衝撃が走った。その数日後、サウジ政府が、9月末には生産が回復し11月末には破損した設備が復旧すると発表したことで、一時は急騰した原油価格は落ち着きを取り戻している。しかし、これまでサウ...
【第619回・特別版】日本外交が生かすべきポンペオ氏との人脈
産経新聞正論調査室長 有元隆志 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任された。同盟関係を重視し、北朝鮮による日本人拉致事件に理解が深かった人物だけに、日本にとって痛手だ。しかし、国家安全保障会議(NSC)の内幕を描いた『ランニング・ザ・ワールド』の著者デービッド・ロスコプ氏がニュースサイト「デーリー・ビースト」に「(ボルトン補佐官の2018年3月の)就任時から...
【第618回】「リビア方式」は正しかった
国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授 島田洋一 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)がトランプ政権を去った。ボルトン氏の存在は特に北朝鮮問題で大きかった。ボルトン氏は理念の明確なハードライナー(強硬派)というに留まらず、政権幹部中、唯一と言ってよい大量破壊兵器拡散防止の専門家であった。ブッシュ政権(2代目)では国務次官(軍備管理・拡散防止担当)を務め、その後、国連...
【第617回】プーチン後へ対露戦略再構築を
国基研企画委員・拓殖大学海外事情研究所教授 名越健郎 9月5日にウラジオストクで行われた安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領の通算27回目の首脳会談は、平和条約交渉で一切進展がなく、暗礁に乗り上げた形だ。ロシア側は「2島」すら引き渡さない方針を固めており、安倍首相の「独り相撲」(朝日新聞と産経新聞の社説)が鮮明になった。安倍外交は対露戦略の総括と見直しが急務だ。 ●...
【第616回】日本の韓国政策の対米説明が不十分
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 米政府は、韓国の文在寅政権が日本との軍事情報保護協定(GSOMIA)の廃棄方針を決め、日韓対立を軍事・安全保障分野に波及させたことを強く批判する立場を鮮明にした。ただ、悪化する日韓関係全般について、トランプ政権や有力議員が日本の主張を十分に理解しているとは言い切れず、日本政府としては米国の理解を深める一層の努力が求められる。 ●韓国の...
【第615回】米韓同盟に大きな亀裂
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 8月22日、韓国の文在寅政権は、日本との軍事情報交換のための日韓軍事情報保護協定(GSOMIA) 終了を決めた。日本にとっては2016年の協定調印以前の状況に戻るだけで、米軍との緊密な情報交換があるのでダメージはほとんどない。一方、韓国にとっては日本の衛星情報やレーダー情報などを瞬時に得ることができなくなるというマイナスがあ...
【第614回】憲法9条は日米同盟の障害に
国基研副理事長 田久保忠衛 戦後74年目の終戦記念日を迎えて思ったのは、国際情勢の舞台が一回転して、戦後とは別の局面が生まれつつあるということだ。日本全体が1日も早く覚醒してほしい。 終戦時に米国を中心とする連合国軍が考え出したのは、日本とドイツが軍事的に2度と立ち上がれない装置だ。日本には日本国憲法の9条を強要した。背景となったマッカーサー・ノートは、日本に自衛力の行...
【第613回・特別版】萩生田氏批判の背景に「戦後病」
国基研理事長 櫻井よしこ 7月26日、私の主宰するインターネット番組「言論テレビ」に自民党幹事長代行の萩生田光一氏が出演した。 30日の朝日新聞で大久保貴裕記者が「(萩生田氏は)憲法改正の議論加速を図る『憲法改正シフト』の布陣を敷く文脈で大島理森衆院議長の交代論に言及した」「政権幹部は…『議長の人事に口を出すなど処分ものだ』と怒りをあらわにした」などと報じた。 また...
【第612回・特別版】韓国大統領の日本非難に反論する
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力 8月2日、我が国政府が韓国を輸出優遇国から除外する措置を決めたのに対し、韓国の文在寅大統領は「非常なる外交・経済状況」が発生したとして臨時閣議を主宰し、冒頭発言で日本を非難した。しかし、その主張は事実関係を歪曲し、国際法の解釈をねじ曲げるものだった。 文大統領は日本の措置を「最高裁の強制徴用判決に対する明白な貿易報復だ」...